2008年9月9日火曜日

歴史法廷の被告

●ファンフレッド、国家管理下に(9/7~各紙)
ポールソン財務長官はブルームバーグテレビのインタビューで「社会人になって以来、はじめて睡眠障害を経験した」と漏らす。「本意ではなかったが」と言いつつ、いつぞやのグリーンスパン氏の主張に相当程度折れた形の政策決定に。

先週の米ドル急反落が決してファンフレッド問題風雲急を告げるという要因ではなかっただけに、週末の絶好のタイミングでの発表で、ドル高株高を演出できたことは、1月の緊急利下げ同様、米国ならでは。

しかし、この話、強引に譬えれば、郵貯簡保を民営化したら、運用の失敗が表に出てしまったので、やはり慌てて国営化し直した、ようなもの。

ファンフレッドとは、住宅補助金ばら撒き政策を担わされた似非民間機関。そもそも長年のばら撒き政策自体が間違っていたというのがグリーンスパン氏の主張。


「アメリカ国民に告ぐ。これまでアジアの同盟諸国の兎小屋に住む人々から羨望されてきた大きな家を諦め、身の丈に応じた生活態度を」という政策に転換できるのか?国営化以降のあるべき姿(分割再民営化とか資産圧縮計画とか)について、大統領戦を控えた両陣営から全く音沙汰が無いことには理由があります。

中曽根康弘氏が2004年に上梓した著書「自省録~歴史法廷の被告として」にこんな一節があります。
(引用開始)
現在の憲法下においては、日本の首相はアメリカの大統領と英国の首相のちょうど中間に位置する存在です。(中略)現憲法はかなり大きな力を首相に託しています。アメリカの憲法、英国の憲法、それぞれの美点を併せ持った内容です。たとえば、首相は内閣の首長として行政各部を指揮監督して、国務大臣を任免し、自衛隊の最高司令官となり、また、内閣の名において天皇に任免される最高裁長官を指名する権限ももっています。

これだけ明瞭に権限があるにもかかわらず、戦前までの消極性を帯びた首相像を払拭できずにいます。これは大東亜戦争敗戦の反動で、強力な政治家、指導力ある首相にジャーナリズムや学界がアレルギーを持っているためです。

また、戦後急速に存在感を拡大したマルクス主義からの批判が首相を萎縮させたことも無視できません。その結果、「調和とコンセンサス」という美名の下、事勿れ主義の政治が続いたのです。そして、これを仕向けてきたのが日本の官僚です。官僚は、縄張り争いで自分の省の権益を守ることのみに汲々として、既存の調和を乱す突出した指導者を好まないのです。

私は、自分が首相になったからには、今挙げたような日本の政治をがんじがらめに縛っている悪弊を全部、断ち切ってやるつもりでした。これが、「戦後政治の総決算」の真意です。
(引用終了)
同著には、中曽根氏が国鉄分割民営化を成功させた情熱と手練手管の両方が記されています。絶大な権限にもかかわらず、多くの首相が行政との戦いに敗れ自滅し短期政権が繰り返される。。。平成のリーダーに手練手管が足りないからなのでしょうか?それだけではないでしょう。冷戦後の我が国のリーダーは、軍事の面でも資源の面でも独立国家ではない現実を突きつけられつつ、世界第二位の経済大国が砂上の楼閣化している事実を国民に突きつけられない。安心・安定な国民生活、軍事独立、資源と食糧の確保、ほとんど解決不能な多元方程式を解かされてきたこと。自民党のなかに上げ潮派がいれば、民主党のなかに公労委にしがみつく派閥がいたりと、二大政党と言いつつ政策論争の軸が見え辛いこと。結果、官僚機構は政権交代という免疫を持たないまま、戦後60年以上、制度疲労を蓄積してしまっており、いざ永田町から邪険に扱われると、社会保険庁よろしく人間爆弾を送りつけてくるという始末。

官僚のなかには、公務員試験に合格した瞬間が最も優秀だったという屑に混じって、民間でも政治でもどこでも力を発揮できる優れた知能と柔軟性、人間力を備えた人物が少なからずいらっしゃいます。こういう人材をいかに発掘し活かしきれる土俵を準備できるか?永田町のリーダーに求められる資質はそこにあるのではないでしょうか?
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