2008年10月31日金曜日

日銀利下げ幅は、たった0.2%

フェニックス証券のFXは「たった2銭」ですが、日銀の利下げ幅は「たった0.2%」でした。瞬間的に市場は大きく荒れており一概に失望で株安・円高と決め付けるわけには行きません。が、市場予測が「0.5%⇒0.25%」だったことを考えると、《絶対にグリーンを捉えると思われていたフェアウェイからのショートアイアンだったのに、手前のバンカーに沈んだ》という印象かも知れません。

ところで、今朝のブログのクイズの答えは・・・化粧品です。皆さん、正解でしたか?えっ、他にも答えはあるって??
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日本株は底か?すっぴんに耐える日本経済へ・・・

●米モトローラ、3.97億ドルの赤字に転落-第3四半期(10/31WSJ)
●アメリカンエクスプレス、人員7000人削減-全職員の10%相当(10/31WSJ)
●グーグルとヤフー、検索エンジン提携協議を中断へ(10/31WSJ)
●エクソンモービル、四半期利益148億ドル-過去最高を更新(10/31WSJ)

今週月曜日にフェニックス証券オンラインセミナーを収録したあと、弊社の株式部長から質問を受けました。
「社長のおっしゃる『米国発』の皮肉は株価指数についても言えませんか?日本(の金融システム)だけが避難場所と言われる割りには日本株が売られすぎている。米国株以上に売られる意味が判らない・・・

・・・株仲間と話をしていたら、日本の弱さは食料自給率の低さにあるのではないか、と。米国は金融バブルがずたずたになっても飢え死にはしないが日本は違う、と。社長はどう思われますか?」

過去7回のセミナーでも食料自給率の問題はしばしばとりあげて参りました。ウチの株式部長のお友達の視点は一理あると思います。

勿論、テクニカルには、
①日経平均の銘柄入替が果たして良かったのか?
2001年の銘柄見直しでIT関連株に大幅に見直した直後のITバブル崩壊だけではない。 浮動株比率を最重視しているMSCIや時価総額ベースで低位大型株にウェイトが置かれるTOPIXに比べ、円高時や相場急落時に実態以上に売られてしまう。

②ドル建て日経平均はそれほど売られていない。
円高だから(輸出関連株が売られ)株安。円高なのに(日本に資金が戻っているのに)株安。ドル建てで見れば当然のこと。

より本質的な問題として、
③日本の金融システムが消去法的に選ばれていることの幻想
しばしば申し上げているように、邦銀の融資先株式の政策保有、その含み損は、外国銀行の不良債権問題と五十歩百歩である。

そして③の裏返しとして
③´個人投資家が育たず、外国人投資家に翻弄されている日本株
政策保有株式の下落による資本毀損は公的資金で助けられるが、損をした個人投資家には税金すら帰ってこない。モラルハザードが続けば個人にとって株式投資は馬鹿馬鹿しくてやってられない。本来、サラリーマン投資家よりも適正水準を意識して売買できる個人投資家の参加が進んでいないことは日本株にとって悲劇。

お待たせしました。最後に食料自給率です。

指数の話ばかりしましたが、個別株で言えば、何が買えるでしょうか?食品に限らず、生活必需品(基礎財)に関連する銘柄ではないでしょうか?

ここでクイズです。今週ある業界の方から「わが業界の企業売り上げは、ただひたすら広告宣伝費のみに比例するんだ」と豪語しておられました。曰く、売上原価にも技術開発にも比例しないと。さて、この業界とは何でしょう。答えは夕刊でお知らせしますが、勿論、生活必需品でないことは明らかです(必需品だと思い込んでいる人も少なくないかも知れないけれど・・・がヒント)。

食料自給率低迷、減反政策、食糧管理政策、食の安全の問題。。。これら全てを農水官僚の仕業だと決め付けるのは全く筋違いです。思えば、何故小学生時代の給食がコッペパンだったのか?何故、農水省は禁止農薬の範囲を広げ、結果的に事故米の定義を拡大させたのか?事故米や事故米焼酎などは、食料としての流通を差し止められただけでなく、バイオ燃料としても再利用されず、単なるゴミとして破棄された事実をご存知ですか?

心ある農家の皆さんが日夜努力されている一方、既得権益に固執するだけの農業団体、その票田に固執する政治家、既得権益への固執となれば日本一の地上波テレビなど大手マスコミ。これら悪の枢軸が農水官僚を集団暴行した結果、食料政策が脳死状態になったと私は推定します。
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2008年10月30日木曜日

米国利下げ。FF金利は1.0%

同日、中国やノルウェイも利下げ。ECB、BOEも来週利下げが濃厚と、WSJ紙。

更なる利下げも臭わせたFOMC。「ゼロ金利政策が近づいていることのジレンマ」という表題でFT紙は90年代の日銀の政策が景気浮揚に成功しなかったことと今回の米国の事態を比較しています。

デフレ下で名目金利をゼロにしても、実質金利(注)は高止まってしまうわ名目金利はマイナスには出来ないわで万事休す。これが90年代の日本だ、と。現在の米国は(ヘッドラインインフレこそマイナスに転ずるリスクが濃厚だが、生鮮食料品とエネルギー価格を除いたコア)インフレは(元々の水準が)高いので大丈夫。金融政策の余地はある、と。

(注)実質金利=名目金利-期待インフレ率

しかし、中途半端な経済学者がよく間違える罠なのですが、只今現在のインフレ率と、その将来の予想とは意味が異なります。加えて、現在の米国金融の最大の問題は名目金利が一物一価になっていないこと、つまり銀行間市場の機能不全は依然続いているため、政策金利を引き下げても銀行間の(無リスク金利である筈だった)金利が高止まり、結局は実質金利を制御できない事態に陥り続ける恐れがあるということです。

完全雇用状態(デフレギャップが無い状態)を実現する金利を「中立金利」と定義づけ、中立金利の下落に対して政策金利の引き下げが後手後手に廻ると日銀が直面したゼロ金利のジレンマに陥ると論じたのがスタンフォード大学のテイラー教授です。金利政策に限定する限り(つまり、中央銀行の機能は金利政策だけではないということが言いたいのですが・・・)、米国の現況は既に90年代日本と同様の落とし穴に嵌っているといわざるを得ません。

ただし、ユーロ圏も五十歩百歩ですが。
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2008年10月29日水曜日

オンラインセミナー、ブログに更新!

今夜から明日にかけてのFOMCでの利下げ期待(FF金利1.5%⇒1.0%)で円安ドル高株高。国家破綻のアイスランドは今更ながらの通貨防衛で利上げを発表(12%⇒18%)。いまやFXは政策金利の予想だけで成り立つゲームではありません。

史上2番目の上げ幅を演出した昨夜の米国株。それでもショッキングなのは、我が国の上場証券会社の四半期決算。日本株も駄目。投信も駄目。外国債券も駄目。ついにやることが無くなった。でも「証券・金融は経済の血液だ。無くなるわけにはいかない」と言われます。本当にそうでしょうか?

レコード針のように、知らないうちに無くなってしまった産業はいくらでもあります。過去5年間で日本酒の蔵元や杜氏の数が激減していることも意外と知られていません。証券会社が経済の血液だというのなら、日本酒は会社組織の潤滑油ではなかったか、と反論したくなります。

日本酒については経験と技術の粋を極めた杜氏さん達の世代交代がうまくいかなかったという供給側の事情と、我が国の若い世代が米麹の香りを好まなくなったという飲む側の嗜好の変化という需要側の事情が相俟って市場が萎縮したと考えられます。しかし事情はどうであれ、一大産業の環境激変に伴い職を失った方々は、過去に培った経験や技術を多くの場合は活かせない新たな職業を自助努力で探すべく苦労されいているに違いありません。

たびたび証券村で村八分になることを恐れず繰り返すのですが、金融業界だけひとり景気や雇用を人質にとって公的な保護を求めるのは筋違いでしょう。加えて日本酒はインターネットでは醸せないけど、金融取引ほどネットに馴染むものはないという厳然たる事実があるのですから。
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2008年10月28日火曜日

出会い系サイトと居酒屋タクシー

昨夜、フェニックス証券オンラインセミナー第7回「ズバリ!売りか?買いか?」の収録後、ビジネスアスキーとマネージャパンの連載企画で大変お世話になったレストラン店主に御礼旁駆けつけました。時は夜11時過ぎ、スパゲッティを食べながら私の横にお座りになった初対面のお客さまと意気投合。実は財務省の官僚の方でして、「居酒屋タクシーが無くなったので、居酒屋バスが夜中の3時に出るんだ」という愚痴とも冗談ともとれる話で爆笑。ビールは出ないと信じていますが・・・

時計(持っていないので正確には携帯電話)を見たら、もう12時。「終電が無くなるので帰ります」と申し伝えたら、「タクシーがあるじゃないですか?お金は使ってナンボです。使われたお金が世の中をぐるぐる廻って景気が良くなり、また貴方も豊かになる」と引き止めていただいたのですが「そういうケインズ的思想が官僚組織を支配してきたから日本はこんなに駄目になったんですよ」とニコッと微笑みながら反論。「ケインズの乗数理論。“倹約は美徳ではない”というのは美しい詭弁だ。天然資源は無制限に人類が費消しうるという前提に従った点で、マルクスと同じ過ちを犯している!勿論、ケインズやマルクスが浅はかだった筈はない。ケインズ理論にせよマルクス主義にせよ経済政策への応用が急がれた余り判りやすく巷間流布させるべく、緻密な部分が端折られた。わたしが無礼にも批判しているのは海賊版ケインズ・マルクスに他ならないのですが・・・」。初対面の官僚のお客さまは「いやぁ、おっしゃる通り。我々財務官僚は宮澤喜一チルドレン。まさしくケインジアン集団ですよ・・・」

別れ際に名刺交換をさせていただいたら関税局の課長補佐さんでした。どうりで為替の話で盛り上がった筈です。

さて、昨日のセミナー、是非オンデマンド(再放送)をお楽しみいただきたいのですが、骨子としましては、
①金融膨張局面(レバレッジが利用しやすい投資環境でキャリー取引バブルが生じる)では為替相場は購買力平価から逸脱する。
②金融収縮局面(レバレッジが利用しづらい投資環境でキャリー取引バブルが萎む)では為替相場は購買力平価に収斂する。
③しかし、購買力平価は万能ではない。通貨には多かれ少なかれ「購買力平価に引き寄せられやすい」要素と「購買力平価を引き寄せる」要素とがある。小国の通貨、特に貿易依存度の高い(生活必需品等の基礎財を輸入に頼りがちな)独立通貨は後者の要素が極端に強い恐れがある⇒例:南アフリカランド、アイスランドクローネ・・・


さて、どうしても1時間では説明ができないもうひとつの骨子として、米国発の金融収縮が銀行間の米ドル貸借機能不全を経て、皮肉にも米ドルが(日本円に次いで)世界で最も強い通貨になってしまっているという話を冒頭致しました。

私のブログでは銀行の不良債権問題を「毒入り餃子」としばしば譬えています。「毒入り餃子」が短期金融市場、すなわち各国中央銀行が自国通貨について日々裁量で金融調節を図っている銀行間市場に突然に混入されてしまったのがリーマン破綻です。

短期金融市場における銀行間の日々の資金繰りの決済と貸し借り。その仕組みは、わたしたちが銀行などの店頭でお金を預けたり借りたいと申し入れたりする相対取引とも異なり、また証券取引所を通じてマッチングされる上場株式の売買と異なる点が実に肝です。短期金融市場は、昔なら短資会社さんを通じて電話で、今ならオンラインで資金需給のマッチングが行なわれます。個人の常識では考えられない天文学的数字が短い間に遣り取りされ、それでも貸し借りの条件、すなわち金利についてはお互い五月蝿いから、まずは条件があったもの同士がセットにされ、その後お互い相手の銀行の名前を知る。という仕組みです。ちなみに、わたしが昔短資会社さんとお付き合いしていたときは私が属する銀行が“常に資金不足”だったので毎日手形を売り、その買い手を短資会社さんが見つけてくれて、金利(と期間)が合えば取引成立。っで、「ちなみに相手はJA何処何処さんでしたよ」、という具合に事後的に伝えられて納得するという商習慣でした。

例えが悪くて恐縮ですが、出会い系サイトで、事前に登録しておいた条件に合致した人が見つかったというだけで紹介料を取られて、会ってみたらガッカリ、みたいなスピード感でないと、残念ながら短期金融市場は機能しないのです。したがって、そのためには銀行というのは倒産しないものだという常識が徹底していないとマズいわけです。

リーマン破綻で、この前提が崩れてしまったために、銀行同士が資金を提供し合わず、タンス預金を溜め込んでしまった。先ほど「わたしが属していた銀行は“常に資金不足”だった」と書きましたが、「資金不足」=「資本不足・経営危機」ではありません。今は亡き長期信用銀行の場合、「金融債や短期金融市場での調達+長期での貸出で運用」というのはビジネスモデルの根幹だったのです。これを極端にやってしまっていたのが米国の商業銀行であり投資銀行(未曾有の長期-短期の金利差が米国の銀行を住宅ローンビジネスに走らせた背景については9月セミナーで紹介したリチャード・クーさんの本に詳しい)。フェデラル・ファンド・レート(FF金利)の近傍で調達できる格安資金を駆使して、サブプライムローンを含む長期金利(+信用プレミアム)を享受してきた枠組みが一挙に壊され、米ドル資金が枯渇してしまったのです。

さて、FXをやっておられる読者の皆さんにとって、スワップ金利は概ね各国の政策金利の近傍であるというイメージだった筈。キャリー取引等の前提も、したがって、

日本円の金利<米ドルの金利<ユーロの金利

リーマン破綻という毒入り餃子が奇怪な現象を起こし始めます。「誰にも貸したくない」と言わんばかりの高金利になってしまった米ドルの銀行間金利。ユーロと交換に借りようとしても誰も貸してくれない。これが銀行間でユーロドルのフォワード市場が崩壊した原因です。多くのFX業者もリーマン破綻直後からユーロドルのスワップを「ゼロとマイナス●●」と提示せざるを得ない状況に陥りました(ただし、フェニックス証券も含め、業者によって頑張って出しているところもありました)。

たびたび酷い譬えで恐縮ですが、ホームレスにはなりたくないと思えば、家を買うか借りるかいずれの方法しかありません。米ドル資金を短期調達して長期運用をしまくっていた米銀は、ドルを借りれなくなった以上、買うしかないということになります。為替の売買を行なう市場(スポット市場)は過去の苦い経験から現在では同時履行が確保されており、信用収縮の悪影響を受けないのです(過去の苦い経験とは、わたしが属していた某銀行が中東の某銀行に倒産直前に日本円を受け渡し対価の米ドルが時差で戻って来なくて大損した事件-銀行名からBCCI事件と呼ばれました-です)。

以上端折れば、出会い系サイトがリンク切れになったのだがホームレスにはなりたくないので米ドルが高騰しているという話です(ここだけ聞くと何の話だ!となりますが・・・)。

お時間のある方は、以上を踏まえ、是非またセミナーのオンデマンドをご視聴ください。最後に素敵なプレゼントもご紹介しております(オンデマンド視聴者の皆さまもプレゼントの対象となりますので奮ってご応募ください)。
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2008年10月27日月曜日

公的資金

個人は株で損をしても税金すら取り戻せない。

一方、

銀行は株で損をしたら公的資金を入れてもらえる。

ところで、

銀行が株を保有する原資は勿論個人の預金である。

何が言いたいかと言いますと、銀行を通じて株を買えば元本保証だ。ただし元本保証の保険料は預金保険料だけではなく預金の低金利という機会費用込みでの話。

90年代と異なり金融システム救済が政局になりづらいのは、世界中の大国小国がこぞって赤信号を渡っているから。そこで我が国の民主党がどうやって存在感を示すのか注目していたところ、昨日朝のNHK日曜討論では菅直人代表代行が「新銀行東京まで救済するというのは筋が違うのではないか?血税を使う以上、ケジメは必要」と、「自民党石原伸晃氏の前では言いづらいが・・・」との前置きを全然“言いづらく”なさそうに敢えて繰り返し繰り返し強調していたのが印象的でした。

わたしにも敢えて繰り返させてください。オーバーバンキングが解消されない限り、各種金融商品の相場のオーバーシュート(バブルの生成と崩壊)は果てしなく繰り返される、と。銀行による株式保有を全面禁止することにより、オーバーバンクを解消すること。株式投資は個人投資家の自己責任によって支えられるお膳立てをすること以外に「貯蓄から投資へ」を実現する方法はない。中途半端な税制改正など全く意味はない、と。

「“マット某”と違って選挙に出るわけではないのだから、マニフェストなんか聞きたくない。それよりも、お前が言うとおり、まだドルやユーロを売り続けていいのか?そろそろドテン買いなのか、それを教えろ!」

それなんですが、今夜たまたま月に1度のセミナーです。第7回目の御題は「ズバリ!売りか?買いか?」。詳しくはフェニックス証券ホームページからどうぞ。CoRichブログランキング

2008年10月24日金曜日

規制緩和論者の鬼の首

●グリーンスパン氏、米国議会で質問攻めに(10/23WSJ、FT)
「規制緩和の前提に一部誤りがあった」とグリーンスパン氏は認める。が、「世紀に一度の信用収縮の蔓延(a "once-in-a-century credit tsunami)」の責任がグリーンスパン個人にあるという意見は認めない。早くも2005年の段階でリスクの過小評価について警告していた、と。

昨夜、火あぶりにされたグリーンスパン氏の発言で印象に残ったのは、

「『銀行経営者は銀行株主の利益を守るために最善を尽くすだろう。銀行経営者とその株主の利己心(利害)は相反する筈がなかろう』、と40年余り信じきっていた。その前提の一部に狂いが生じた。」

「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)だけは規制強化されても良い。が、それ以外のデリバティブ(金融派生商品)は現況のままでちゃんと機能している。」

「逆に『大きくて潰せない』問題を国会議員の皆さんに問いたい。『いくつかの大企業は潰れると市場や経済にただならぬ悪影響を与えるから政府はそういった企業の野垂れ死にを放置しないだろう』という発想は、より規模が小さいが頑張っている競争相手に対して不公平。『うちが潰れちゃ困るでしょう』と市場経済を“人質”に取ろうとする(「大企業とそれ以外の敷居」を持ち出す)大企業には何らかの罰則を設ける必要がある」

尤も、
「未曾有の一時帰休と失業の発生を食い止められるかどうか、定かではない。」とも、

実際、
●ゴールドマン・サックス、人員10%削減。GMとクライスラー、人員削減を追加へ(10/23FT他)

世界中でバラマキ政策が正当化され、モラルハザード大国の日本は敵失により浮上しつつあります。だから円高なのか?しかし、(マイカルとそごうは潰したのに)ダイエーを潰さなかった政府自民に対して、民主党鳩山氏が当時「これで小泉改革は終わった」と発言されたのを記憶しています。規制緩和論者の鬼の首を取って、規制強化を正当化する。景気や雇用を“人質”にとって、既得権益をこっそり守る。このようなことが許されているようでは、我が国もいつまでたっても良くはなりません。
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2008年10月23日木曜日

ユーロだけではない通貨のメルトダウン

●英ポンド、対米ドルで5年ぶり安値に転落(10/22FT)
イングランド銀行マーヴィン・キング総裁が「景気後退宣言」。“ザ・バンク”は大幅な利下げを準備しているのではないかとの憶測が流れた。

昨年春、1ポンド2ドルを越えたというニュースをBBCが派手に、且つ皮肉たっぷりに報じていたのが懐かしい。それが現在は1ポンド1.62ドル近辺となっています。

トルコリラは3.5%下落、韓国ウォンは3.2%下落、南アフリカランドは4.1%下落(いずれも対ドルの1日の動き⇒対円では更に下落率は大)。

さて、ユーロですが、先々月号の『月刊FX攻略』に載せたユーロ“バブル”崩壊予想のロジックをご紹介して本日の更新の締めにさせていただきます。今月号がちょうどいま書店に並んでいるところです。日本橋丸善などでは“棚ざし”から“平積み”への取り扱いが変っており売れ行き好調のようで良かったです。

バブルには共通点がある。広い意味でキャリートレードであるということ。レバレッジという触媒によって助長されること(逆にデ・レバレッジはバブルを崩壊させる)。その生成の歩みは「築城3年」の如く、その崩壊の勢いは「落城3日」に似ること。上記ITバブルのように確信犯のバブルもある(「合理的バブル」という)。

この点は、まさしくFXにも当て嵌まる。

FXのキャリートレードは次の理屈で「築城」されるバブルだ。つまり、

①インフレ指標の悪化⇒②政策金利の引き上げ⇒③高金利目当ての資金流入による通貨の上昇⇒④投資過熱による更なるインフレ悪化⇒②に戻る

この循環が起こっているのが現在のユーロ圏であり、しばらく前まで起こっていたのが多くの新興国である(
原稿〆切時点7月4日現在)。もし仮に多国間の資金移動の殆どが貿易など実体経済に裏打ちされたものであれば、上記循環で③から④へとは移らず輸出減少で景気が鈍化しインフレが抑制される筈。ところが、多国間を移動している投資資金の規模は貿易額の何十倍、何百倍にも上るのが現状なので、インフレと高金利は循環⇒連鎖となる。一方、これと逆の循環を起こしているのが日本と米国だ。どちらの循環が好循環なのか悪循環なのか見方によるけれど。

世界経済は様々な理由で経済学が想定するような一物一価は必ずしも成り立たない。資本移動の自由さに比べると、財の移動や労働量の移動には様々な制約があるからだ。それでも循環⇒連鎖が度を越すと、購買力平価と為替相場が余りに乖離してしまうことになる。特に、信用制度が罅割れや金融政策が操縦不能となるスタグフレーション、暴動やテロ、天変地異はバブル崩壊の引き金となる。

円キャリーのドル高が信用問題をきっかけに崩壊したように、ドルキャリーのユーロ高も時間の問題だと思うのは筆者だけだろうか?「原油高ドル安=負の連鎖」と囃し立てるマスコミ・エコノミストの気持ちもわかるが、ドル売りを決め付ける一辺倒な“不美人投票”は余りに危険だ。どの国もそれぞれ醜い欠点を持っているのが実情なのだから。

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2008年10月22日水曜日

クライマックスは第二ステージへ

●米ドル、対ユーロで1年半ぶりの高値(10/21FT)
4月のフェニックス証券セミナー『ユーロ、どこまで強いか?』で申し上げた「年内にユーロドルで1.35、ユーロ円で135を目指して下落」という予想レベルを突き抜けてしまいました。足元は、ユーロは対ドルでも対円でも更に弱まる可能性はあります。ただし、これは私が4月に申し上げたロジックとは別の道理が働いてのこと。FT紙にも書かれたとおり、米ドルの調達需要が過多なため、買われざるを得ないという皮肉な現象です。

本日の日経新聞にもある通り、米ドルLibor(ロンドン銀行間貸出金利)年末越3ヶ月物は3.83%と7営業日連続で低下。直近ピークより約1%低いものの、リーマン破綻前の2.8%前後に比べると依然高いという状況。銀行間信用の萎縮が更に改善すると、米ドルの底抜けの可能性がある(逆に言うと米ドルに対する協調介入のあり方が資金供給からスポット為替の買い支えに転換を迫られるほどの激変の恐れがある)ことを示唆します。

●ヤフー64%減益、アップル27%増益-7~9月期四半期決算(10/21WSJ)
ヤフーは年間4億㌦程度のコスト削減(含む人員1割カット)も発表。アップルはマッキントッシュPCとiPhoneが好調だが、この先景気後退の影響については何とも言えないと同社CEO。いずれも安い買い物ではありませんから。

●オバマ氏対マケイン氏
ネオコン支援メディアとノーベル賞経済学者クルーグマン氏に名指しされたWSJのNBCとの共同調査によれば10ポイント差と両氏出馬表明以降で最大の幅に。ただし、他の調査期間は4ポイント乃至9ポイント差とまちまち。

●アルゼンチン、民間ペンションファンドを国営化へ(10/21WSJ)
同国の株価指数は11%下落。
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2008年10月21日火曜日

銀行による株式保有は禁止されるべきだ

●CITIC香港現地法人、為替投機で20億㌦穴を開ける(10/20FT)
CITIC(中国国際信託投資公司)は政府系巨大ノンバンクみたいなもの。その香港現法(上場企業)が米ドル売り+豪ドル買いのポジションで大ヤラレした。しかも巨額のポジションを持つことについてちゃんと稟議があがっていなかった。

内規や決裁権限は措くとして、マクロ分析で豪ドルが対米ドルで割安に映った気持ちは個人的には判らなくもない。レバレッジ過多に硬直的なロスカットルールではリスク管理の機能が果たされない。むしろ損失の思わぬ拡大に繋がる。この点、個人レベルでも巨大金融機関でも同じなんだと本件は示している。

こういう馬鹿な政府系金融機関があるお陰で、豪ドル/米ドルは史上稀に見る押し目買いbargain huntのチャンスを提供してくれているような気もします。

ところで昨夜の相場は、
●景気後退見通しで米ドルは前半の下落を補う(10/20FT)
米ドルと日本円は先週ボラティリティ急騰を味方につけ高値を享受してきた。しかし、スウェーデンと韓国の公的資金導入発表で、ドルと円は下落。

世間の大半は相変わらず単細胞。米ドルと日本円はキャリートレードの原資に過ぎず、リスク性向の度合いに反比例して上げ下げすると同紙は指摘。

本日一番取り上げたかったのは、
【番外編】自己資本規制比率見直し検討-銀行貸し渋りに金融庁が対策、含み損処理など焦点(10/21日経)
日本の銀行は海外の銀行に比べて株式の保有比率が高く、株価下落局面では規制自己資本下落が追い討ちを掛け貸し渋りの原因になる、というのが銀行界の言い分。

ちなみに、銀行保有株式(など有価証券)の含み益を規制自己資本に入れて欲しいとBIS(国際決済銀行、於バーゼル)に主張したのは日本。結果、認められたのが45%相当を補完的項目に入れること。逆に含み損については税効果勘案後を補完的項目から差し引かれるので現在の法人税率を前提とすると約60%相当と、プラスとマイナスで非対称的だと泣き言の理由になっている。

何故、バブルが繰り返されるか?何故、銀行破綻を招くほどの不良債権が発生するか?私の答えは変りません。銀行の数、銀行員の総人件費が高すぎるのです。R銀行を公的資金で救済して「失われた10年」に終止符が打たれたと巷間言われますが、わたしに言わせれば、R銀行1行分がこの国には余計だ。

銀行保有株式について言えば、銀行が融資先の「物言わぬ株主」という地位に甘んじないと融資先を増やせない融資を伸ばせない。間接金融の少ない需要に対して供給過多(オーバー・バンクと言います)つまり過当競争となっている状態を、90年代高額の授業料を払ったにもかかわらず是正出来なかったことこそ、バブルと不良債権が繰り返される諸悪の根源です。

時限を設ける等の激変緩和措置があって良いので、銀行による株式保有を例外なく禁止すべき。「貯蓄から投資へ」のラストチャンスが今到来した、というのが私の考えです。

ちなみに、R銀行は無借金経営の優良企業の当座貸越枠さえ貸し剥がす一方、貸出先には不良人材を半ば強制的に送り込み、自発的な経営改革を逆行させ、結果として不良人材派遣元の融資や政策保有株式の価値を下落させ、それゆえ公的資金(つまり我々の血税)も返済できない、愚かな金融機関です。
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2008年10月20日月曜日

バブルは何故繰り返されるのか?大手メディアも注目のアイスランド

ひとり当ブログで拘泥し続けていたつもりのアイスランド国家破綻問題。週末は、日経新聞やNHKなどでmも取り上げられました。NHK「海外ネットワーク」という番組のなかで、アイスランドの港に大量に留め置きされている輸入高級車が映し出されていました。日本を上回る一人当たりGDPは世界5位。この購買力は、漁業国に過ぎなかった土地の痩せた小さい島国が金融自由化後の超高金利政策で世界中から資本を集め金融立国として成長を遂げたことに起因しています。

国家財政によっても管理治癒出来ないほど暴走してしまっていた金融ビジネス。その一コマとして、ある典型的な家族が「ザ・低金利通貨」日本円建てで住宅ローンを借りて(日本人から見ると豪華な)家に住み始めたが、今回のアイスランドクローネ暴落と不動産バブル崩壊で名目借金が倍増しつつ資産価値が半減したことで絶望の淵に立たされている姿がありました。

一家の主は「銀行の詐欺にあったようなもの。どうしてくれるんだ」と語ります。それでも私は言いたい。金融リテラシーが足りなかったことは言い訳にもならないと。返済能力を遙かに超えた豪邸に住み始めた人たちを、分相応の慎ましい生活をしている人たちの血税で救う道理は無いと。

銀行の詐欺という点では、米国のサブプライムローン問題の縮図とも言えるアイスランド。国家の体力に限界があるため、皮肉にもモラルハザードすら起こせない窮地こそ欧米の大国と状況は異なりますが。今回ヨーロッパで住宅バブルが酷かった国に共通するのは、「ザ・低金利通貨」日本円建て住宅ローンが広まっていたことがあげられます。

バブルが何故繰り返され、そして何度繰り返されても潰れるのか?昨今色々な著作や言説が巷間出回っています。当ブログの一貫した主張は、金融自由化・金利自由化が導入されたにもかかわらず、銀行の数が十分減っていない、銀行員の数や給与が十分減っていないから、銀行(員)が食い扶持を繋ぐために、詐欺的手段を含めた余計な“付加価値”を追求しようともがき苦しむ。その結果、不動産の相場操縦という究極の選択をせざるを得なくなってしまっているのです。日米欧を問わず、この現実に背を向けて、公的資金をばら撒いてインフレ経済で実質借金を棒引きにしても、徳政令のツケは結局、分相応の慎ましい生活者に回されるだけなのです。

依然こうした主張は極々少数派。テレビ朝日「サンデープロジェクト」では公的資金+財政出動は当然。ばら撒き方をどうするか、が議論の焦点。小泉+竹中両氏は人気が無いそうです。確かに小泉家の世襲政治は余計だったかも。

昨夜、近所の銭湯で、日経CNBCの幹部の方とバッタリお会いしました。是非、「夜エクスプレス」特番でリチャード・クーさんと竹中平蔵さんのコブラ対マングース討論を実現して欲しいと要望しておきました。
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2008年10月17日金曜日

モラルハザードとファイアーウォール

●スウェーデン・クローナ、対ユーロで史上最安値(10/16FT)
バルト海沿岸諸国への貸出“Baltic exposure”の多さ、失業率の急増が懸念されていると。

●ハンガリーとウクライナ、IMF等に支援要請-アイスランドの二の舞を演じたくない?(10/16FT)
ハンガリーに対してはECB(欧州中央銀行)が50億ユーロの信用枠を設定。過去15ヶ月の信用収縮“credit crunch”のなかで、IMF(国際通貨基金)のような多角的機関“multi-lateral agency”が大陸欧州の国家を救済する動きは初めて。信用に餓えた市場“credit-starved markets”から資金繰り難に陥っている債務国の危機の深刻さを象徴しているとFT紙。ウクライナの株式は年初来80%値を消している。

資本を輸出している国だから投融資が焦げ付いて駄目。資本を輸入している国だから投融資が引き上げられて駄目。というのでは、為替の下落の説明にはなりませぬ。世界金融危機という言葉。米国発という枕詞がしばしば付けられております。その米国自体は、通貨ドルが日本円以外では最も堅調であるという皮肉な現象。リーマンショック以降1ヶ月間書き続けた私の捻くれた貿易理論でないと説明がつかないのでは。

多角的multilateralの反対語が一方的unilateral。自分勝手な、とも意訳されるこの単語。ブッシュ大統領率いるネオコン政権の形容詞として随分頻繁に使われて来ました。昨日ブログに書いたスイスの公的資金案はunilateralの局地でもあります。

unilateralな周辺国の政策にspeedyに対抗したイギリスのブラウン首相は、支持率が急回復しているとのこと。世界中の報道機関や経済専門家は略一様に「米国発の危機なのに、米国の対策が一番遅くて中途半端だ」という論調。いまさらモラルハザードが、何て言っているのは地球上で私だけかも知れません。が、ヨーロッパ諸国がモラルハザード問題を強引に無視してunilateralな政策を競うように公的資金をばら撒く最大の理由はuniversal bankingの国(銀行と証券の兼営が堂々と許される国)においては、自己投資で失敗しても自業自得である筈の事業部門が社会インフラとしての商業銀行部門を人質に取っているからです。銀行と証券の兼営を禁じた米国1934年及び1935年証券法(いわゆるグラス・スティーガル法)が撤廃されグラム・リーチ・ブライリー法に切り替わったもののインフラ整備が対応し切れていない米国との決定的な差になっています。

こんなことを言うと、証券村のなかで村八分にされるでしょうが、私は旧証券取引法65条(現金商法34条)には20年間一貫して反対です。しかし、投資銀行業務と似て非なる自己投資部門で穴を開けた責任を取らせず、血税に責任を取らせるためでは全くありませんファイアーウォールを置くべき場所は、銀行と証券の間ではなく、銀行証券(投資サービス業)と自己投資業との間であるべきだと考えるからです。
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2008年10月16日木曜日

ユーロ参加へ。デンマークと貿易依存度

今朝の日経1面に「デンマーク、ユーロ参加検討」とあります。
マーストリヒト条約の批准を真っ先に国民投票で否決し世界を驚かせたデンマーク。ユーロ圏入りについても同様に否決されており、同国の通貨はデンマーククローネとして流通しています。

日経新聞は、「デンマークは財政規律や物価安定などのユーロ導入に必要な基準を満たしており、国内の承認が得られれば導入はほぼ確実だ」と報じています。また、同国は農業国でもあり農業の生産性が非常に高いことでも知られています。しかし、貿易依存度が高い小国であることも事実です。

世界各国の貿易依存度の推移

現在のユーロ加盟国よりも物価・財政の優等生で国内経済の基礎的条件が整っているデンマークですら、同国首相をして「ユーロ圏外に留まるコストが大きくなっているのは明らかだ」と語らしめる世界金融危機。アイルランド(これはユーロ採用国)やアイスランドよりは農業の生産性は高いのですが、貿易依存度が高い加工貿易立国において為替の適正水準が市場の暴力に翻弄されざるを得ないという例は続きます。

●韓国ウォン、1日で10%弱も下落(10/15FT)
異常な下落率は11年振り。「これは『暗黒の木曜日』ではない。『血みどろの木曜日』だ」と地元高官。

貿易構造にはそれぞれ違いはありますが、昨夜たった3時間で20%も下落した南アフリカ(ランド)。ほかにもハンガリー(フォリント)など、小国の通貨が地滑り的に狙い撃ちにされているのは、巷間言われている経済悪化や外国資本依存だけでは説明がつきません。米ドルの日々の調達が難しいので、苦肉に策としてスポットで米ドルに交換せざるを得ない状況と、繰り返し申し上げている加工貿易モデルの小国の為替の適正水準は翻弄されやすいという二つの要因を見逃してはならないのです。

時に、際限ない銀行資本注入と各国中央銀行協調による米ドル供給により米ドルのスワップ市場(≒日々の資金調達)は急速に回復していることにメディアはもっと注目すべきです。ユーロ通貨もそうなのですが、金融危機の震源地に近い筈の米ドルやユーロが日本円以外の通貨に対しては下落率が大人しかった特殊要因が剥がれ始めているとすれば、次のシナリオは本格的な米ドル安かも知れないのです。

●スイス政府、UBSの不良債権(約6兆円)を買取。更に資本注入(約5500億円)(10/15WSJ)
同じ非同盟中立とは言え、アイスランドとスイスでは随分違うもの。さすがスイス、と思う反面、本当にこれで良いのか・・・
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2008年10月15日水曜日

格差だけでなく「相場も作られている」

ポール・クルーグマン『格差は作られた』の真骨頂は、

「ここ数十年の米国の格差拡大の原因が経済のグローバル化によるものでは必ずしもなく、黒人差別に起因する。そして共和党レーガン政権こそ、黒人という言葉を直接使わずに巧みに黒人≒虐げられた貧困層を一層虐げる黒人差別政策を正当化し実現化した」

という部分です。クルーグマン教授自身はレーガン政権の経済諮問委員を務めたことがあるのですが。

氏の最新の著書で具体名は明かされていないのですが、『格差は作られた』を読む限り、クルーグマン教授の立場はオバマ候補支持と見て良いと思われます。

そんなクルーグマン教授をして、ノーベル経済学賞受賞直後に「大筋でOK」(10/14CNN)と言わしめたポールソン財務長官の米銀救済策。リーマン・ショックから約1ヶ月が経とうとしている中、いまだ腑に落ちない点を挙げてみると、

★ポールソン長官の7000億㌦公的資金投入案。「政府による市場介入は少ないほうが良い」ネオコン仲間の代表者ブッシュ大統領を如何なる論法で説得したのか?

否、その前に、

★「リーマンだけは特殊。財務の体質も経営の品格も極端に酷かった。救う価値が無かった」と例外的に扱ったとしても、遙かに体質が良かった筈のゴールドマン・サックスのCDSも10%近くまで跳ね上がり、結局は公的資金を強制注入される始末。ポールソン長官ほどの頭脳+戦略+情報(≒人脈?)があれば、出身母体が被る火の粉は想定出来たと私は思う。何故に単純破綻処理を採用して市場を驚かせたのか?

次は、再出ですが、

★上記ポールソン長官の7000億㌦法案。ブッシュ大統領を説得。オバマ、マケイン両党候補をも一枚岩にさせておいた直後の、下院採決での共和党議員の大量造反。マスコミや専門家の多くが言っている「下院選挙前の特殊事情」または「ブッシュ政権末期のダッチロール(レームダック)状態で、大統領自身が求心力を失っている」という見方は正しいのか?

繰り返します。筋書きのないドラマを演ずるほど、米国の保守勢力が柔じゃない。想像を絶する資金力と影響力があると思われます。

★7000億㌦の使われ方。特に、法案修正で議論が喧しかったのが公的資金を使用した(恐らく資本注入と不良債権買取の両方を含む)銀行の経営者に対する「報酬制限」

過去20年、我が国の銀行経営と金融行政を“体感”してきた身としては、長銀・日債銀の経営者の逮捕⇒起訴⇒私財に及ぶ損害賠償請求。しかも、不良債権を作ったときの経営者ではなく、引き継がされた負の遺産を隠さざるを得なかった経営者を、です。米銀経営者の報酬制限と聞くと、殺人犯が罪状認否で「私がヤリました。間違いありません」という裁判が、本来なら死刑か無期懲役かを争うべきところ、禁錮か罰金かを争っているようにしか思えない!そんなアンバランスな議論で世界中のマスコミも専門家も同盟国首脳も市場も必要以上に踊らされはいませんか?

「過去20年」だ何て言うと後ろを振り返り過ぎではないかと思われるかも。1985年のプラザ合意後の円高デフレ(資産バブル)期、我が国の都市銀行は未曾有の利益をあげていました。活発な不動産融資と市場関連収益。しかし一方で、同時に進行していた金融自由化(⊃金利自由化)で伝統的ビジネスモデル≒間接金融依存の世の中は時価発行増資の普及やコマーシャルペーパーまたは大口定期預金の解禁等で間違いなく蝕まれていたのです。当時、日経新聞を読み始めていた私が不思議でならず、未だに不思議なのが、どの都市銀行も“仲良く”株式含み益を実現しては払わなくても良いはずの法人税を喜んで払っていたこと。まともな経営者なら、金融自由化(⊃金利自由化)対策でビジネスモデルの転換やリストラに備えるか、またはその経費が嵩む時期まで含み益を温存し、無駄な法人税を払わないという判断をしたと思われます。実際、そんな判断をした銀行はなく、業界一斉に益出し+余計な税負担を行なったというのは、単に護送船団の横並びでは説明が付かないものを感じます。思うに、都市銀行やメガバンクの役員には余程の人格者か余程の悪党でなければなれない、ってことは端折ると市井人には見えざる手で非合理的な経営判断を押し付けられたと察するのです。

財金分離の見直し論が何処からともなく聞こえてくる昨今。私にとって古くて新しい疑問を何故読者の皆さまにご紹介するのか?現在の米国の保守政治と金融業界(特に大手。含む旧投資銀行)との関係も曰く言いがたい密室の持たれ合いという切り口を持たないと、上記の疑問点が解決できないからなのです。

七転び八起きブログは、経済教室でもなければ政治暴露ブログでもないのですが、単純に、

銀行救済⇒円安

銀行破綻⇒円高

ではこの先は間違ってしまう
と思われます。格差容認、自由放任の米国保守勢力が何故に変節し市場介入を演じているのか。今日はこれから、角川書店さんの『月刊ビジネスアスキー』+『マネージャパン共同企画第5弾の収録で、大阪大学社会経済研究所のチャールズ・ユウジ・ホリオカ教授と対談します。クルーグマン教授にノーベル賞が渡ってしまったので、ホリオカ教授の受賞はちょっと先になってしまいそうです^^;が、「経済学の7不思議のひとつ」の呼び声高いフェルドスタイン=ホリオカ論文は世界中の経済雑誌で最も頻繁に引用されているもののひとつ。国際貿易金融の分野ではクルーグマン教授に勝るとも劣らない成果をあげておられ、我が国では貯蓄理論の分野で第一線の研究者として、日系アメリカ人では最もノーベル賞に近い学者です。クルーグマン教授とは異なる角度で日米政権やIMFの中枢をご覧になって来られたホリオカ教授に、本日の★疑問★をぶつけてみようと思っております。
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2008年10月14日火曜日

格差は作られた

●ノーベル経済学賞、ポール・クルーグマン氏に(10/13WSJ、FTほか)
昨日のブログ(とは言え、祝日はアクセス数が低いのですが^^;)で御紹介した『複雑系経済学入門』のなかで著者の塩沢由典氏はクルーグマンの著書『経済政策を売り歩く人々』(原題は「経済的センスとナンセンス」)を好著として紹介、クルーグマン教授を米国若手三指のひとりとして大活躍中の経済学者とベタ褒めしています。

実は日曜日に池袋ジュンク堂で購入したのが、菱山泉著『ケネーからスラッファへ』と同時にクルーグマン著『格差は作られた』(早川書房、2008年6月)でした。米国で深刻化する格差。その原因はグローバル化による途上国との競争が原因だから優勝劣敗は自己責任で仕方が無いものだと決め付けている規制緩和論者に対して、ブッシュ政権に象徴される白人、もっと言えばWASP、更には一握りの既得権益を有する超金持ちの独り勝ちを確実にするための屁理屈に過ぎないと看破。中流破壊と絶望的格差の根源が黒人差別にある、と主張する本です。これだけ言うと、何だか朝日新聞の記者がジャーナリスティクに書いた本みたいですが、平易な文章ながらも数字と論理を緻密に積み上げた研究成果だと言えます。

そのWASPの金融版権化と言えるモルスタ。ブッシュ政権の目の黒いうちは大丈夫と思いつつ、フェニックス証券のFXのカバー先(カウンターパーティ)のひとつなので一抹の不安もありましたが、

●三菱UFJ、モルスタへの払込を完了(10/13WSJ、FT)
払い込まれた金額は予定通り90億㌦。

モルスタ株の急落により条件見直しが注目されていました。以下は私見ですが、モルスタ側(WASP?)としては日系企業の議決権は20%程度に留めたいという気持ち。三菱UFJ側としては、株価下落を反映せずに議決権割合(シェア)が調整されないというのでは株主代表訴訟に耐えられないという気持ち。両者の利害が一致して、出資形態は根本的に見直され、優先株(うち大半が普通株への転換権付)で配当利回り10%となったのだと察します。

三菱がモルスタを戦略的にどうしようということはひとまず措き、ショッピングとしては絶妙。生命線を握りながらのファイナンスはハゲタカビジネス同様、成功する筈。

敢えてどの局とは言いませんが、似非ポピュリストのニュースキャスターが「三菱には金だけでなく口も出して、日本の金融機関の存在感をアピールして欲しい」と言ってますが果たして如何なものでしょう?北朝鮮テロ支援国家解除を寝耳に水で聞かされつつ、アフガン・イランという遠方での紛争戦争でミカジメ料をふんだくられ続ける我が国。これら全てにWASPの利害が絡んでいる以上、日米関係の手綱を引くのはそう簡単なことではないでしょう。

●ポールソン財務長官、主要銀行トップをワシントンに呼びつける(10/13WSJ)
バンカメ、JMモルガンC、GS、モルスタ、シティが含まれる。
●米財務省、米国の主要9銀行に総額2500億㌦の公的資金注入を決定(10/14WSJ)
以上2本は臨時ニュース。
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2008年10月13日月曜日

ノー・モア・リーマン【号外】

●英国、欧州、およびスイスの各中央銀行、ドル資金供給を無制限に(10/13WSJ)
日銀も追って同様の措置を取る見通しと同紙。G7の隠し玉はこれだったのか?欧州時間に入り、足元再び円高は一服感が出ています。

●「リーマン型」破綻はこれ以上出さない-G7で約束(10/12FT)

ところで、金融庁は先週末、各FX会社に対して、「もしお宅のカバー先(カウンターパーティー)が破綻して更生債権を100%償却という最も保守的な処理を仮定したら、自己資本規制比率はどうなりますか」という緊急アンケートがありました。リーマンをカバー先にしていたFX会社もあった筈なので、もっと早くこのようなアンケートが来ると思っていたのですが。もしかしてリーマン以外の金融機関のことを心配(想定)してのアンケートだったのか。

金融商品取引法上、カウンターパーティが倒産すると、預かったお金が返せない恐れがあります。と書く必要はあります。ただし、これはあってはならないこと(あって欲しくないこと)。でも、最悪のケースに備えるのが経営の使命。

フェニックス証券の9月末の自己資本規制比率は
979.49%
まで上昇し、引き続きFX業界で最高水準です。余裕を持たせ過ぎという意見も聞かれます(ある意味、ROEは犠牲にしているから)が、この余裕のお陰で金融庁への回答は堂々と出来るというもの。そして敢えて繰り返さなければならないのが、格付は全く当てにならない(当てにしていない)ということです。
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神の見えざる手

「経済学は相場を当てたり金を儲けたりするための学問じゃない」と昔から咎められたものでした。心理学を勉強しても異性の気持ちは読めないのと同じか・・・何とかして女の子にモテたいものだと必死で岩波新書の心理学関連の書籍を読み漁った高校時代。その効果が全く無かったことが今となっては懐かしいです^^;

役に立つ学問もあります。物理学は自動車や新幹線を走らせることに貢献していると思われます。モノづくりに貢献している物理学。その殆どは、“ニュートンの林檎”で巷間流布されている「万有引力の法則」をひとまず疑わずに先に進めているものです。この“そもそも論”を疑い、直接は《モノづくりの生産性向上⇒物質的な豊かさ》に貢献しない道を選んだ日本人研究者にノーベル物理学賞が与えられました。

喜ばしいニュースは、目先役に立たないことを一生懸命やることの大切さだけでなく、立派な研究が目先の報酬や豊かさと関係がないだけでなく、学歴や学閥とも関係しないことを教えてくれました。駿台や四谷大塚の偏差値が気になって仕方がない世の教育ママ(これって死語?)に理解してもらえるでしょうか。

昨日、池袋のジュンク堂で、いかにも役に立たなさそうな本を見つけました。『ケネーからスラッファへ―忘れえぬ経済学者たち』(菱山泉著、名古屋大学出版会、1990年)。公共工事のバラマキ政策論者とレッテルを貼られてしまった可哀想なケインズほど有名ではない二人を極々簡単に紹介します。『経済表』で有名なケネーはフランスの経済学者で外科医(ポンバドゥール夫人、ルイ15世の侍医)。フランス革命期に相次いで死亡したブルボン家の陰に、ケネーの存在があったという噂もあるそうです。大革命前夜のブルボン朝は重商主義政策まっしぐら。ベルサイユ宮殿建設は余計ながらも、殖産興業と富国強兵のために、労働者と兵隊の実質賃金を下げるべく、穀物相場を抑える必要があったので、穀物輸出が禁止されていた。これにケネーは猛烈に反対。規制はなるべく緩和・撤廃すべき。富を生み出すのは商工業ではなく土地(農業)だけと言い切ったケネーは自由放任主義の草分けだとか重農主義者とか言われます。ケネーについて詳しく判りやすい本として、『読書と社会科学』(内田義彦著、岩波新書、1985)を挙げます。スラッファはイタリアの経済学者で、新リカード学派と呼ばれています。ケネーとスラッファを結び付けているのが、金曜日の夕刊で敷衍したイギリス人経済学者リカードの存在なのです。

リカードは、比較生産費説を従えて自由貿易の利益を説き、穀物法に反対する等、市場原理主義者の顔を持っていますが、初期のリカードは、重農主義者ケネーの説を定式化することに成功します。リカードの好む譬で、小麦と絹しか商品(産業)が無いと仮定、ふたつの産業の利潤率(利子率)が同一だとすると、利潤率は小麦産業における小麦の投入量と産出量(の比率=生産性または技術)のみで決定する。つまり小麦(基礎財)の産業技術が閉じた経済の利子率を先決的に決定し、絹(非基礎財)の利子率は従属的に決められるに過ぎない、と。

その後、リカード自身、基礎財だけを特別扱いする態度を捨ててしまいますが、初期リカードの重農的立場を継承し発展させたのがスラッファです。基礎財、非基礎財というと、戦後アメリカで何があっても主流の座を明け渡さなかった新古典派経済学(ぶっちゃけミクロ経済学)で出てくる必需品と奢侈品(ぜいたく品)と似ていますが、理論上は殆ど関係の無い概念です。

新古典派経済学は、リカードが経済学を勉強するきっかけになったと言っているアダム・スミス『国富論』の有名(というか恥ずかしながら筆者もそこしか知らない^^;)「神の見えざる手」というワンフレーズに対する果てしない注釈に過ぎないと言った経済学者がいます(奥野・鈴村『ミクロ経済学』岩波書店)。限界効用が逓減する(無差別曲線が下に凸)+限界生産性が逓増する(規模の不経済が存在する)という前提に立てば、中高生の社会科の教科書に出てくる需要曲線と供給曲線が×点のところで交わり、そこで価格と取引量が決まる。その均衡点に神の見えざる手で導かれるというわけです。

新古典派経済学にとって、限界効用逓減と限界生産性逓増は、古典力学にとっての万有引力の法則と同じようなもの。ただし、恐ろしく異なるのは、万有引力の法則を信じて疑わなくても人類の役に立つ様々な理論や機械装置が生み出されるのに対し、経済学の前提(モデル)は素人の直感に照らしてもホンマかいな?と疑ってしまいたくなることです。

リカードの初期理論に注目したスラッファの理論展開は、経済学のなかでは全くの非主流。経済企画庁(現 内閣府)やIMFでも計量モデルとして使われることはないでしょう。端折って言いますと、限界効用も限界生産性も、逓減も逓増もしない(グラフで描けばまっすぐな直線だ)と仮定すると、神の見えざる手が最適解を導かなくなってしまう。

ひとつの閉じた経済を連立方程式に譬えると、商品の数だけ連立方程式があり、その相対価格(商品の数-1)、利潤率、労働賃金が未知数(変数)となります。つまり、この多元連立方程式は方程式の数より1個だけ未知数が多くなり(自由度=1)、商品の相対価格が全部決まっても、利潤率と労働賃金の比率は一元的には決まらないという恐ろしい結論が導き出せるのです。

難しいのは、均衡モデルではない線形モデルというのは神様が均衡点という最適解“もどき”導いてくれないので、人為的に決めざるを得ない、または人為的に決められてしまっている可能性があるということです。

これを国際貿易論、ひいてはFXの相場の適正水準はどこなのか?という議論に発展させていくことは、筆者が社長をクビになったら本腰を入れて研究したいと思っていますが、ヒントは既に金曜日のブログにあります。純粋な加工貿易型の小国の為替水準には適正レベルが存在しない可能性があること。農産物(+天然資源)等、基礎財を中心とする閉じた経済が国民経済の大きな一部として内包している国の交易水準や金利が先ず先決的に決まる。これは、資本移動が規制されている非現実的な前提に立った議論ですが、「外国の金融機関は信用できない」地球規模の金融危機に際しては、このような前提に現実が近づく可能性が否定できません。

神が導いてくれないのなら、人為的に規制するしかないじゃないか?と、均衡を否定する論説が規制強化や計画経済を正当化することに使われるのはあってはならない話でしょう(『複雑系経済学入門』塩沢由典著、生産性出版、1997)。赤信号だったけど、皆で渡っていたのに、轢き殺されたという犠牲者を構ってあげるほど世界経済に余裕はない。そんなことに公的資金を使うくらいなら、四川大地震の被災者を助けるべきです。

決済インフラの機能を守ることが目的であれば、公的資金の投入範囲は決済預金と銀行間市場を時限的に政府保証することに限って良い筈。赤信号とわかっていながら、貸し手も借り手も互いに収奪しあった住宅ローンその他の不動産関連取引も粛々と破綻処理していけば良いのです。
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2008年10月10日金曜日

日経225先物が取引停止-大証

前代未聞。冷静に考えれば、SQ前夜に米国で空売り規制が撤廃されてしまったのが最悪のタイミングだった。

大和生命、更生特例法を申し立て。

きょうに限らず、今週は特に多くの取材をお受けしました。よくある質問は、

「株価(指数)の適正水準は何処だと思われますか?」

わたしの答えは、株価(指数)には適正水準なるものが存在しない。但し、為替(FX)は別かもしれない。。。です。「為替(FX)は別かも、、、」の話は後に回して、株価については巷間よく言われるように

①株価が下落⇒②逆資産効果⇒③消費が低迷⇒④企業業績が悪化
⇒っで、①に戻る。
際限なくこれが続くので、自由放任主義は株価の自由落下に繋がるという理屈です。

「株式や為替については、損をした人がいれば必ず儲けた人がいる筈。上記②の逆資産効果は“火事場泥棒”の資産効果で打ち消される。」というのが捻くれ者の七転び八起きの珍説ではないのか?なのに適正水準は無いと答えるのか?

株価が自由落下する場合の火事場泥棒は人数が少なく富の偏在が極端になり過ぎるので資産効果が十分働かない。但し、このような火事場泥棒、いや失礼、先見の明のある超大金持ちは主としてM&Aという形で株価の下支え要因になります。既に、わたしの周辺でもそのような動きが加速しています。M&Aの件数は、株価が上がりすぎて、企業経営者がM&Aに頼らないと株主の期待に副えない状況下と同じように、株価崩落時にも激増するものなのです。

一方、為替(FX)については、購買力平価が適正水準の目安の筈だという事実をキャリートレードバブル時に有名エコノミストが無視し尽くしたと、4月以来批判し続けて参りました。ところが、通貨によっては、

◎購買力平価が投機的な実為替の水準を引き寄せる

という原則通りに行かず、

×投機的な実為替が購買力平価自体を引き寄せる

ということが起こり得るのです。極端な例で、決して日本のことではないのですが、貿易依存度が高くて食糧自給率が低い加工貿易立国を想定します。極端な例なので、労働者国民の食糧と工場の原材料は全て輸入に頼る。完成品は全て輸出に回すと仮定しますと、この国の為替水準が、これまた極端に昨日から今日にかけて半分に通貨安になったとしても、生産要素の費用増と完成財の売上増が打ち消しあって、意外なほど国民生活に影響を与えないという結論が導き出せます。

80年代後半の円高局面では、以上“暴論”を経済学者や政治家、政策担当者が気付かなかったか無視した。当時わが国の指導者が見過ごしたのは、円高メリットを国民の端々に還元せずコッソリ独り占めする卸売+小売の既得権益構造が複雑怪奇に横たわっていたという問題の所在。

勿論、わたしが掲げた例は極端過ぎて、我が国にもコメのように極端に自給率が高い一次産品は存在するとか、自動車や電化製品を一部は内需してきたわけですから、日本を想定して「為替にも適正水準は存在しない」という暴論を当て嵌めるつもりはありません。

しかし、小国で一次資源(農林水産物や鉱物、原油など資源エネルギー)を殆ど持たない貿易立国には当て嵌まってしまうのです。実にアイスランドがその典型例ではないのか。但し、アイスランドは貿易立国ではなく似非金融立国だったようですが。

一方、私の大好きなニュージーランド。小国という点が当て嵌まるのがヤバいですが、貿易立国ではありません。電気も食糧も、鎖国しても大丈夫な体制が取られています。

実は、1980年から2007年までOECD計算による購買力平価(ビックマック指数よりは信頼出来るとされているが勿論完璧たりえない)と実為替のグラフを米ドル円とNZドル円で作ってみました(やり方が判ればブログにアップします)。やはり、小国である分、NZドル円のほうが、実為替に購買力平価が翻弄されている傾向が出てきます。

以上のお話は、為替相場が貿易収支だけと影響しあうという大前提になっています。貿易取引を遙かに上回る資本取引・金融取引が実為替をより翻弄することは現実見ての通り。資本取引や金融取引がクレジットクランチホームバイアスにより縮小すると、貿易要因が増えるので、現在は青臭い「貿易論」をする格好のタイミングだと思っています。それでも、小国に対する為替相場は行き過ぎる危険があるのだということをご理解いただけたら、長い文章を週末に書いた甲斐があるというものです。

週末は、リカード、レオンチェフ、そして“M.フェルドスタイン=C.ホリオカ”を猛勉強です。
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2008年10月9日木曜日

独り拘るアイスランド国家破綻の危機【夕刊】

先ずは事実関係から、
★10/7(火)アイスランド2位の銀行ランズバンキが経営破綻。即、国家管理下に置かれる。
ランズバンキの企業規模、破綻直前の収益力や時価総額は無意味な数字なので、従業員数が2000人強。人口30万人のアイスランドでです。日経新聞では国家管理として小さく扱われているだけですが、「支払不能と宣言し、管財人による保全命令が下った」即ち、倒産だというところが重要なのです。

★英国でネット銀行を営むアイスセーブ(ランズバンキの子会社)、同様に支払不能に。
氷のように固く貯金を守ってくれそうな名前ですが、英国民30万人の口座が凍結状態になってしまいました。アイスランドの人口と差が無いじゃないか、とFT紙。

★10/8(水)ブラウン首相は、英国の預金者は“英国の手により(?)”完全に取り戻されると約束。
★ダーリング財務相、預金保険の範囲(増枠後の£50,000)に拘らずアイスセーブ預金者全てを保護すると約束。
★ダーリング財務相、BBCのインタビューで「アイスランド政府は、信じられないことだが、英国民の預金の弁済の意思はないと伝えてきた」と証言。
★ブラウン首相、「預金補償をしないというのなら、アイスランド政府と法廷で戦う」と宣言。

この間、オランダ金融大手INGが自ら英国内でネット(+電話)銀行を営む子会社によるアイスランド系銀行2行の英国内預金業務の買収を発表。買収額は明かされていませんが、預金総額は£30億。またISDAはランズバンキが、翌水曜日に正式に国家管理となった同国3位の銀行グリトニール共々、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の信用事由(トリガー)に該当するとしています。

そして続報。
★テロ対策法Anti-terrorism powerを適用。アイスランドと英国の関係は1970年代のタラ戦争以来の険悪な状態に。

英国民がアイスセーブに預けた預金は£46億(1兆円近い!)に及ぶ。このうち£22億をアイスランドの預金保険スキームに、£14億を英国の預金保険スキームに、残りの£10億を英国政府に負担させようと財務省は考えていた(英国民の税負担は£24億。4000億円強相当ということに!)。

テロ対策法適用となると、親銀行ランズバンキが英国内に保有する資産を凍結、差押、売却換金することで事後的に上記税負担が取り返せるかも知れないと財務省関係者は語る(しかし貸付債権など金融資産の強制売却はランズバンキ取引先への貸し剥がし等、信用収縮の連鎖反応を懸念する法律専門家の声も聞かれる)。

一方、
★ダーリング財務相は預金保護の範囲を個人に限り、地方自治体や大学については保護しないと前言撤回

★アイスランドのハールデ首相、「アイスランドクローネ下落阻止で西側同盟が非協力的だった」と怒りをぶつけ、「だから“新しい友達”を探さざるを得なかったんだ」とロシアからの€40億の融資依頼を正当化

ただし、噂では、英国民の財産がアイスランドを経由してロシアにも流れているという情報があり、前代未聞のテロ対策法適用という強硬手段の背景になっているとの説も。

以上はここ数日のFT紙の記事をまとめたもの。何だか、朝銀公的資金投入問題(北朝鮮問題)を彷彿とする向きもいらっしゃるかも知れませんが、北朝鮮系信用組合の貯金の恐らく殆どは在日朝鮮人の預けたものである点は異なります。いずれも、銀行業務をやっている所在地国で預金保険料を払っている=預金保険対象金融機関であることは共通です。

「世界金融危機global financial crisisに直面して“やり得”moral hazardを指摘している場合じゃない」というのが各国首脳、大手マスコミ、有名知識人に略共通する意見になってきていますが、「済んだ事は仕方ない」では済まされないケースがこのように出て参ります。リーマン経営者の退職金や賞与も然りですが、アイスランドの金融行政と銀行経営が共同正犯でアイスランドに収奪された富が集まっていたとすれば、外交・軍事を含め出るところに出ざるを得ないと言われても仕方がないのではないでしょうか?もともとは不毛な土地の貧しい国で且つ非武装中立の国体維持の有形無形の費用もあったのでしょう。この点、ロシアとの関係はもっとちゃんと調べてみたいと思っています。

最後に、アイスランド系のネット銀行が何故にそれほど英国内で闊歩していたかですが、これも調査中ですけど、アイスランドはネットバンキングとクレジットカードが相当早くから発達していたらしいのです。その理由は、数少ない資源であったタラの漁獲量が激減して、インフレが発生、紙幣発行費用が馬鹿にならなくなったからだそうです。現在では現金決済額はGDPの1%程度のようです(出所Wikipedia)。
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米欧6中央銀行、協調利下げ

米国2.0%⇒1.5%(公定歩合も同時引き下げ。本来のFOMCは10/30だった。)
英国5.0%⇒4.5%(本日10/9予定だったBOE総会は前倒しによりキャンセル)
ユーロ圏4.25%⇒3.75%(先週10/2のECB総会で金利据え置き発表が記憶に新しい)
カナダ3.0%⇒2.5%
その他、スウェーデン、中国、UAE・・・・

昨夜BBCで在東京特派員がキャスターから「日銀はどうして協調利下げに参加しないのか?」と質問され「日銀の政策金利は殆どゼロなので、下げようが無いからだ」と答えていたのが印象的でした。今週初、アスキー+マネージャパン共同企画で対談をさせていただいたソフトブレーン創業者の宋文洲さんも「日本が超低金利で海外に資本輸出し過ぎたのも問題の一端。FXもレバレッジを掛けさせ過ぎじゃあないのぉ」と忌憚の無いご意見。ごもっとも!わたしは「FX会社は、過度なレバレッジに頼らずに事業の継続が出来るような体制・体力を目指すべきだと、少なくともフェニックス証券は考えているんです。現在の競争環境で完璧な体制を築くのは至難の業ですが、フェニックス証券はその理想に相当近いほうだと自負しています」と回答。

日銀はさておき、協調利下げの前日のRBA総会、オーストラリアは予想幅を超える1%の利下げを発表。一時的な効果はあったものの、このところの豪ドルの下落は、対日本円は勿論ですが、対米ドルでも最悪状態です。これは今月23日に政策金利発表を控えるニュージーランドについても言えます。

4月以来、当ブログやセミナーで一貫して申し上げてきたことは、信用収縮⇒金融危機、つまりデ・レバレッジの局面では、為替相場は購買力平価に収斂するという読みでした。これが、対米ドルでユーロやポンドを売り推奨させていただいていた理由です。しかし、もうひとつ忘れてはならなかったのは相場は振り子だということ。極端から手を離したブランコは最下点では止まらず、もう一方の極端へと一旦は向かってしまう。信用収縮⇒金融危機の震源地である筈の米国が、それゆえに米ドルの空売りコストが割高になってしまっている要因も手伝い、米ドルのパフォーマンスは対日本円以外では頗る良好になっております。よって、豪ドルとNZドルは購買力平価を通り越しても下落が止まらない恐れあり。

そうは言っても、日本人にはファンが多い、オーストラリアとニュージーランド。セミナーでも申し上げたとおり、外貨預金の感覚で(すなわちレバレッジ=1からゆっくりと・・・)買い始めても良い時期なのではないでしょうか?外貨預金より取引コストが圧倒的に低いFX(外国為替証拠金)取引。円の一人勝ちがまだまだ続くと読まれる向きには、米ドル売り+豪ドルand/orNZドル買いというポジションも作って(このポジションは過去数週間は最悪のパフォーマンスでした。これを外貨預金でやるのは無理です)対日本円で中立(ニュートラル)にすることだってできます。米ドルを余計に売り建てて、対日本円買い長(ロング)にすることもお好みで可能です。

毎度のことながら相場は当たるも八卦、当たらぬも八卦。人生は七転び八起き。投資は自己責任かつ余裕の範囲で。。。いまほどこの原則が大事なときはありませぬ。
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2008年10月8日水曜日

世界同時株安。世界金融危機。

●モルスタ株急落-三菱UFJからの資本注入に問題が生じたとの噂で(10/8WSJ)
モルスタ側は交渉は順調に進んでいると説明、噂を否定。が、結局は前日比25%安。

バーナンキ議長が利下げの可能性を仄めかした後も、株価下落は続き、ダウ平均は500ポイント以上下落(過去5日間で13%下落)。

●英ブラウン首相、数百億ポンドの公的資金の注入を決定(10/7FT)
イギリスの大銀行は半国営化されることに!RBS株が39%下落(前日は20%下落)、HBOS株が41%下落する等、銀行株暴落を背景に。イギリス国民一人当たりの税負担は£1400~£2000になりそうだが詳細はこれからとFT紙。

●スペインも“独善的”な手段に走る-300億~500億ユーロの公的資金で国内銀行の資産を買取へ(10/7FT)

アイルランド同様、ユーロ圏での“独善的”な財政規律のなし崩し的違反は批判されてもしょうがない。EU首脳会議はようやっと預金保護は一人当たり5万ユーロまでと決めた矢先に、スペインは(同国のこれまでの5倍の)10万ユーロと発表(昨夜深夜BBC)。

で、アイスランドはどうなのか?人口20万人の漁業立国は、元NATO加盟国でしたが、2006年に米軍が撤収、非武装中立国家となっています。EU漁業協定を批准できないとして、EUにも加盟していません。一人当たりGDPは日本を上回る豊かな国を支えていたのは、筆者ブログでもしばしば取り上げてきた高金利通貨アイスランドクローネ。でも、タラとニシンだけでは、自動車や家電を買えません。貿易赤字をファイナンスする筈の海外資本が不動産市況を過熱、バブルが弾け、銀行と国家が共倒れする危機に直面。ようやく身の丈にあった生活の重要性に気がついたとしても時既に遅すぎたのかも知れません。

このような状況下で宣言された、アイスランドクローネとユーロの固定相場。機能するのでしょうか?ロシアから米ドルの緊急融資も実現するかどうか不明です。

しかし、高緯度の割りに温暖な気候で知られる非武装中立の小国は、三位一体改革を逡巡しつつ、アフガン戦費もっと負担しろと“みかじめ料”を際限なく強請られ続ける我が国の国体を考えるうえで、ユニークな材料にも思えるのです。アイスランドより南アランドというセミナーをやった割にはアイスランド自体の話を詳しくやらなかった小職としてはこの国のことをもっともっと調べてみたい気になりました。
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2008年10月7日火曜日

臨時ニュース【夕刊】

ロイヤルバンク・オブ・スコットランド、公的資金注入を求めるべく英国政府と交渉(臨時ニュースFT)
この報を受け、同銀行の株価は30%下落。昨夜、S&Pの格下げで既に20%下落していた。但し、格下げと言ってもRBSの長期カウンターパーティ格付でAA-⇒A+と、まだまだ全然投資適格水準なのだが。

元英国4大銀行のひとつナットウェスト銀行とスコットランドのアルスター銀行を傘下に抱える世界最大の商業銀行。かの地スコットランドにおいては発券銀行でもある。

●アイスランド首相、「このままだと国家破産」だと発言(10/7FT)
同首相演説前にアイスランドクローネ(弊社ではこの通貨は取り扱っておりません)は対ユーロで45%下落。同国の銀行株は全て取引停止状態。

リーマン・ブラザーズのファルド社長、米下院委員会で喚問(10/7WSJ、FT)
倒産の数日前に役員3人への退職金計25億円相当を支払っていたことが電子メールの記録から明らかになったリーマン。「欲深い経営陣によるカジノ経営」を長年主導してきた同CEOは焼きを入れられるgrilled。

一方、同社長は、AIGを助け、リーマンを助けなかったことに憤りを感ずると証言!?

通常、私のブログ【夕刊】では、《朝刊》のようなことは書かないのですが、余りに色々あるもので朝書ききれないということと、欧州時間寄付の久々の株価上昇をかき消す臨時ニュース等で、いつになく更新をさせていただきました。
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米株暴落。ダウ終値、4年ぶりに1万㌦割れ

★聞き捨てならぬ「免責事項」
8年前、営業未経験の私をモルガン・スタンレーの社債引受部門に引っ張ってくれた当時の上司が、出勤初日夕刻、恵比寿ガーデンプレイス1階の喫茶店に私を誘い出して曰く、「外資系というと短期で実績を出さないと直ぐクビにされるイメージがあるかも知れないが、モルスタに限ってそれはない。興銀(現みずほ)の本店が東京からニューヨークに移転したぐらいのつもりで。。。くれぐれも肩の力を抜いて、焦らず頑張って欲しい。

「ただし、」えっ?ただし??「うん。ただし、米株。ダウ平均が1万㌦を割れるような事態になると前提は変ってしまうんだよ」「引受部門の仕事は、主幹事を一つでも多く獲得する。日系証券会社のフランチャイズに分け入り、少しでも引受関与を増やす。そうやってこつこつ稼いだ引受手数料が私の給料の源泉なのではないんですか???」

★サブプライム以前に潰れていた我が故郷
今年の春に、モルスタの社債引受部門の同窓会に呼んでいただきました。モルスタを引退し、現在は上海に留学して中国語を勉強中(ちなみにFXもやっていただいております・・・これ余計^^;)の当時の上司が一時帰国。ご自宅に大勢が集まり、改めて元上司の人望を認識。最後に元上司の挨拶が「やはり残念なことは、自ら立ち上げ率いてきた社債引受部門が廃部になってしまったこと。。。」そうとは知らなかった私は驚きました。

リスクの取り過ぎ、レバレッジの掛け過ぎで批判の渦中にある投資銀行。その中にあって、実直に手数料を積み重ねてゆく引受サービスは別物、と思いたいところですが、実際には、リスクを取れない⇒儲からない⇒既に無くなっていたというのです。ちなみに、M&Aの仲介・助言というサービスも手数料ビジネスの部門も、余程の“棚牡丹”案件を除けば、企業買収に必要な資金(レバレッジを含む)を提供する等、案件のリスクに参加することで、やっと案件にありつけるというのが実態です。

★需要が無くなったわけではない投資銀行業務。。。しかし、、、
三菱UFJ、野村がそれぞれモルスタ、リーマンを救済。「投資銀行は終わっているのに。。。」と批判が専門家の間で喧しいですが、“ビジネスモデル”が完全に破綻したというのは言い過ぎ。我が国では私の周辺(これ意味深長^^;)も含め、事業承継や業態転換が思うように進まずに悩んでいる同族企業など中小企業が少なからず存在し、事業の建て直しやM&Aの仲介・助言を外部に求めざるを得ない差し迫った状況に置かれています。思うに、この仕事を請け負える人材は非常に貴重で、月坪何万円もする綺麗なビルの一室にふんぞり返って他人の褌で相撲を取るバルジ・ブラケットのバンカーには勤まらない。彼等が望む報酬は得られない割には手間と人間力が要求される仕事なのです。この点、三菱や野村がどう考えるか、注目です。

赤信号、みんなで渡れば怖くない!?
「銀行預金全額保護」を電撃発表したアイルランド。イギリスは預金保護を350,000ポンドから500,000ポンドへ明日から引き上げ。スペインも「EU統一の金融システム救済策が策定されないようであれば」アイルランドの真似をすると発表。デンマーク等も追随か(以上、10/6夜BBC)。

最もスピーディでトップダウンな唯一の“金融システム救済策”かも知れません。が、ユーロ圏については、政府の簿外債務の急増は許されるのか?世界標準でペイオフ解禁となった我が国の1千万円は何だったのか?
「世界大恐慌以降の保護主義の連鎖を彷彿とさせる」(EC委員長。10/3FT)EU諸国の動きは、少なくともユーロ採用国にとっては明らかに通貨統合の遠心力となってしまっています。
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2008年10月6日月曜日

やっぱり変だよ世界の金融

何となくここのところ月曜日は雨降りと円高が多いと思うのは私だけでしょうか。
さて、今日はこれから大ベストセラー『やっぱり変だよ日本の営業』で有名なソフトブレーン創業者の宋文洲さんを直撃インタビューです。角川さんとのご縁とご協力で、これまで世界ソムリエコンクール日本代表の佐藤陽一さん、最新刊『投資のレッスン88』が話題の逢坂ユリさん、そして今更解説を必要としない森永卓郎さんという尊敬すべき仕事人の方々をインタビューさせていただいております。
「月刊ビジネスアスキー」「マネージャパン」で内容はご覧いただけます。どうかお楽しみに。

●米金融安定化法案下院可決で一辺倒の週末各マスコミ・・・
しかも尚、共和党は造反者が多数。我が国で言えば、今となっては飯事の郵政民営化法案、大平内閣不信任案可決、40日抗争くらいしか思い浮かびません。議員あっての二大政党と言えば聞こえは良いが、サブプライム関連資産(今では危険資産toxic assetと改名済)証券化同様、議会制民主主義も流動化しているということか。

●ドイツ、最大の不動産金融会社の救済失敗。新たな救済枠組みを策定へ(10/5FT)
総資産€4000億と欧州最大級の商業用不動産金融会社の破綻は現代ドイツ最大の金融破綻になりかけていたところ。護送船団による€500億の資金注入が予定されていたのだが・・・

●イギリス、預金保険の限度額を一口座当たり£350,000から£500,000に引き上げ(10/4FT)
ご存知の通り我が国のペイオフは1千万円。これでも「『貯蓄から投資へ』とは名ばかり」と証券業界の諸先輩社長が嘆かれます。イギリスのペイオフ、もともと随分高かったんですね。アイルランド政府が銀行預金全額保護という電撃発表で、ブラウン首相は怒り心頭。週末直ちに対抗策をとったもの。

宗教戦争とは言いません。が、明らかに保護主義合戦に入ってしまっている欧州金融事情。結果として、ユニバーサルバンクは守ってあげざるを得ないという欧州の事情が底流にあり、米国よりも破綻処理になりふり構わずという構図ゆえ、対米ドルでユーロのほうが銀行間のフォワード市場(スワップ市場)に安心感がある。その分、逆日歩が跳ね上がり続けている米ドルより空売りされやすい。よって、ユーロは対ドルで非常に弱いということになっております。

もし私の分析が正しいとすると、米国の金融が安定化し銀行間市場が落ち着きを取り戻すと、対ユーロでは高止まっていた米ドルが底抜けする恐れがあります。しかし、週末ご覧のとおり、バラマキ政策では金融安定化は無理。資金決済と金融商品ブローカー業務だけをグッドバンクとして残し、ヘッジファンドの真似事は良かれ悪しかれ独立してやりなさいという切り口を替えた新グラス・スティーガル法こそ今の米国金融に求められているのではないかと思いますが、何度も申すように私の意見は極々少数派。こうはなりませんので、米ドル暴落には意外と時間が掛かりますよ。
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2008年10月3日金曜日

金融安定化法案、下院を通過か?

9/29(月)金融安定化法案が下院で否決。3年前の我が国の小泉郵政解散のときの造反劇が単なる飯事として忘れ去られてしまう程、意外な与党共和党からの夥しい造反。それでも、恥を掻かされたのはブッシュ大統領よりもポールソン財務長官よりも、むしろ政策を抱き込まされた民主党オバマ候補だったのでは?

実際、オバマ候補の支持率は今週に入りマケイン候補に急迫される始末。ペイリン副大統領候補やペロジ下院議長の空気を読めない言論が撹乱材料たりうるかどうかは論じません。ちなみに、空気を読めない人材は企業組織に無くてはならない貴重な存在だっ、と言うのが零細企業経営者である七転び八起きの確信ではあります。

思い起こせば、①ベア・スターンズは救済⇒②ファニー・メイとフレディ・マックは救済⇒③リーマンは破綻⇒④AIGは救済⇒⑤ワシントン・ミューチャルは破綻⇒⑥ワコビアは救済、、、そして7000億㌦の金融安定化法案は与野党大統領候補まで抱き込み「根回し」をやり遂げ、下院での大量造反劇で否決。

全てが想定外、または政権末期のダッチロールだ、、、というのが一般の論調です。にもかかわらず、これでも筋書きのあるドラマである可能性を否定できないと疑うのが筆者の仕事であります。

ロシアに触発されても動かなかったグルジア情勢。筆者ブログは西側メディアが伝えない当該紛争の真相をお伝えしました。米政権は軍事的な負担や資源問題を含むロシアとの不毛な対立を見事に避けつつも、日本の殆どの無能メディアを自然と掌握し軍事専門家をしてロシア批判を繰り広げさせました。直後、オバマ候補の支持率はマケイン候補に急迫または逆転されるという事態が発生しました。

金融が政局となっている大統領戦直前の米国。ここで再び、オバマ氏率いる民主党が共和党の手練手管に弄された背景には、ファニー・メイとフレディ・マックという大衆迎合的なバラマキ機関が実に民主党陣営の恥部であるという実態があります。クリントン政権の財務長官でオバマ候補のブレインだとされるサマーズ氏もこの件になると途端に雄弁を失うことも思い出されます。

以上のお話は、筆者ブログを愛読して下さっている某上場会社の社長との昨日の談義の成果。本業は証券会社システムでいらっしゃいますが、話は不動産市況やM&Aのことまで及び、さすが上場会社の社長さんだと敬服するばかり。これからもお世話になります。

おっと、勿論、為替相場の話もしました。絶対的に弱含むと筆者が予想した米ドルよりも更に弱いユーロ。理由はユーロ圏の景況感だけではありません。銀行間市場の機能不全はむしろ米ドル相場にプラスなのです。少なくとも短期的には。。。。失われた10年・・・という言い方が嫌いな筆者ですが・・・ジャパン・プレミアムを要求された邦銀各行ですが、この間実に円高基調であったことと理由は殆ど同じです。解説は改めて・・・・・
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2008年10月2日木曜日

秋の夜長に欧米か

●ヨーロッパ各国の首脳、銀行救済案で意見が分かれる(10/1FT)
欧州全体に蔓延しつつある銀行破綻の嵐を食い止めるべく、各国首脳は10/4(土)パリに集結の予定。その前に、仏サルコジ大統領から「€3000億規模の銀行救済ファンドを立ち上げるべき」との提案が報じられたが、反発する声も多く、サルコジ氏も程なく撤回!?米国金融安定化法案の7000億㌦が主として「不良債権を切り離す」ことを目的としているのに対し、サルコジ案は銀行そのものを公的資金資本注入で助けるというもの。

ドイツ、イギリス、アイスランド、アイルランド、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、、、と銀行破綻と個別救済が相次ぐヨーロッパ。“市場原理主義”の米国と異なり公的資金の導入や国家権力の介入に抵抗が少ないから、、、との論調が多いが、EU統一精神には反する筈。産業界も「自分達は関税や補助金が撤廃され、のんびりしたヨーロッパをエンジョイ出来なくなって久しい。銀行(と農業)だけは例外、というのはもう我慢できない」という声が上がっても不思議ではない状態。

昨日、ベルギー当局に公的資金投入を受けることになったDEXIA銀行。わが国の公営公庫と似たビジネスモデルの同行のCFOが昔東京にいらした折お話する機会がありました。EU発足後、アイルランドが金融特区として金融機関の事業所税を極端に下げることで、欧州各国の金融機関のコールセンターを呼び寄せることに成功させたのはズルいゎ(怒)とおっしゃっていたのが印象的でした。

モラルハザード反対論者の小職としても注目せざるを得ない米国金融安定化法案のスケジュールは、現時点では、上院が将にこれから日付変更線に掛けて行なわれ、下院は《当初10/2(木)の予定が》10/3(金)にずれ込みと日本語ロイターが報じています。10/3(金)は注目(?)の雇用統計の後も秋の夜長となりそうです。
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2008年10月1日水曜日

金融安定化法案の否決で、主なコメント集

●NYダウの寄り付き反発-7000億㌦金融安定化法案に賛成の議員にとっては痛手かも(9/30CNBC)

ブッシュ演説もあり「修正案は通るだろう」という期待で米国株反発、第二の流血の月曜日の残忍な売り浴びせの半分を帳消しに、、、というのが一般の論調。

そんな中、日経CNBCは(フェニックス証券提供の)「夜エクスプレス」枠を柔軟に伸縮させ、ニューヨークからの生番組を取り入れつつ、時機を得た編成で視聴者の投資家心理に応えてくれました。

上記は、NYSE寄り付き中継中のCNBC本家の現場記者の皮肉たっぷりのコメント。彼は共和党右派の支持者でしょうか???

●「これは巨大な牛肉のパテの中に一欠片のマシュマロが混入されているようなもの。パテには目が無い俺も、このパテだけは御免だ」とジョージア州選出の共和党下院議員ブラウン氏(9/30NYTimes)

和食専門の筆者には判りづらい譬えですが、このブログで時々使わせてもらっている毒入り餃子だということがおっしゃりたいのでしょう。不良債権がマシュマロ程度なら問題ないような気もするし、日本だったらマシュマロ業界から失言騒ぎを起こされるかも知れません。これぞ「ごね毒」!
●法案否決で(米国株の時価総額という)国富が一夜にして1兆㌦失われた-ブッシュ大統領演説(9/30CNBCほか)

それに比べれば7000億㌦は安くて済む、というのが趣旨。これは非常に判りやすい説明、ブッシュ大統領のブレインは有能だ。。。

今朝の日経新聞の1面にも、「世界の株、ピークから1年で時価総額2000超円目減り」とセンセーショナルに扱われています。しかし、流通市場の時価総額が減るというのは人類全体が損をしているのでしょうか?国富、いや世界の富がドブに捨てられているのでしょうか?

発行市場と車の両輪をなす流通市場は確かに重要なインフラではあります。しかし、もし読者の皆さんが企業家だとして、元手300万円で事業を始め、幾多の苦難を乗り越え事業が成功し、2007年7月株式公開を実現、(極端な譬えですが)読者の皆さんは創業者株全株を売却して3億円を手に入れていとします。創業から株式公開までの間、配当はなかったとすれば、読者の皆さんは流通市場から2億7000万円という巨額の富を手に入れたことを意味します。勿論、努力の結晶であることは言うまでもありません。1年強経過した只今現在の時価総額は2億円になってしまっているとしましょう。流通市場は1億円の富を失っています。これは逆に言うと、株式公開が現時点であれば、読者の皆さんの富は1億7000万円に留まっていたという意味でもあります。

時価総額の目減りは、流通市場で売り逃げた投資家だけでなく、発行市場を良い時期に活用できた事業家にとっても、言葉は悪いですが流通市場からの富の収奪にほかならないのです。

これは住宅価格を含めた不動産相場にも当て嵌まります。不動産は「空売り」が出来ない資産だから、世界中の人たちが程度の差こそあれロングポジションだ⇒だから不動産相場の下落は世界全体の富の目減りだと信じ切っているひとが大勢いますが、これは全く詭弁です。

FXをやっていらっしゃる読者の皆さんなら、円安だから円資産が目減りしただの、円高だからデフレだデメリットだと評論家に悲観論を叩き込まれても、もう誰も騙されないでしょう。

ブッシュ大統領の「1兆㌦」発言も、モラルハザード政策を導く見事な詭弁ですが、これ以外にインターバンク市場の復活の方法がないのなら、まぁ良しとするか、、、
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