2009年3月19日木曜日

FRB、米国債3000億㌦購入-驚愕のFOMC

市場関係者は予想外の国債買いオペ発表に驚き、為替相場は一転円高ドル安。しかし、当ブログや弊社セミナーを御利用下さっている方々にとっては「遂にこの日が来たか・・・」というご感想だと思います。一番驚いたのは、白川日銀総裁だと思うのは私だけ!?

米FOMC直前となった我が国の金融政策決定会合。こちらは国債買いオペ1.8兆円/月への増額>(年額で現在の16.8兆円から21.6兆円へ)を決めたが、直後の記者会見で白川総裁は「買い取り額は限界に近い」と述べています(今朝の日経朝刊)。

これに対して米連邦準備制度は、

★3000億㌦(約30兆円)の長期国債を買い取り(今後数カ月で)

★住宅ローン債権(ファニーメイやフレディマックの証券化商品など)の買い取りを倍増(7000億㌦⇒1兆4500億㌦)

日米の中央銀行の桁違いの「事実上の国債引き受け」に対して、米WSJ紙と英FT紙は異なる評価を与えています。

WSJ紙は、

「中央銀行の役割は、議会の承認を得ずに、金融危機に対して積極果敢かつ融通無碍に動けることだと印象付ける発表だった。殊に、米国議会では血税が更に金融機関救済に使われて良いのかどうか“政局”になりかけている状況において、中央銀行の柔軟性は一層重要だ」

と肯定的なニュアンスを感じましたが、一方FT紙は、

FRBの貸借対照表は、約3兆㌦(≒300兆円)に膨らむことになる(一挙に40%近く膨張)。米国債と住宅ローン債権だけでなく、信用市場活性化スキーム(=1兆㌦)を加えると、約4兆㌦(≒400兆円)。すなわち米国経済の三分の一の規模だ」

とインフレリスク(≒米国経済が好転した際にマネーサプライ【通貨供給量】を制御出来なくなる恐れ)を指摘。実際、金価格はFOMC後に6.6%も上昇し、1トロイオンス=942.90㌦に急騰しています。

有名エコノミスト(≠有能経済学者)の多くが鵜呑みにしているフィリップ曲線(インフレと失業率が反比例するという“経験則”)があります。確かにインフレ期待(≠今目の前のインフレ)は、金の延べ棒への投資家だけでなく、製造業をはじめ卸売業、小売業、そして勿論、不動産業にも設備投資や在庫投資をすると儲かるという気分にさせてくれます。安く仕入れて高く売れると思うから、または店子の収入が上がるから賃料を上乗せ出来ると思うから、です。

理屈では確かにそう。しかし、現実はどうでしょう。今年より来年のほうが物価が上がる。更に再来年はもっと上がる。そういう期待が蔓延したとしても、自動車を買う人が増えるでしょうか?デジカメやエアコンを買う人が増えるでしょうか?

失業や貧困、格差や需給ギャップの問題を、マクロ経済の問題としか見なさない伝統的な枠組みにこそ致命的な欠陥があるのです。

加えて、なまじ情報と統計が整備された日米のような環境においては、貨幣錯覚は成り立ちづらい。ばらまき政策など公的関与は「景気の駆け込み寺」たりえないという本音が、有名エコノミスト(≠有能経済学者)の間で殆ど語られないのは残念。

最後に、このブログは「FXダイアリー」であることを忘れるわけにはいきません。国債買い切り(マネタイゼーション)は実態的に自国通貨売りを目指す単独介入に他ならない。FOMCの結果、対ドルで円は買われたがユーロはもっと買われていることに注目。中国(人民元)は格別として、日銀と欧州中央銀行(ECB)とで、どちらが節度を守れるかが勝負。

そしてこれは中央銀行だけの問題ではありません。

「中央銀行の金融緩和がまだまだ足りない」

という政治から、

「国民ひとりひとりが他人に買ってもらえるものを作ろう、または売ろうという原点に立ち返らない限り失業や企業倒産は避けられない。自分の不幸を他人のせいにするな!」

と国民を叱咤出来る政治に転換出来る国の通貨が生き残る。私が長期的にはやはり円安と一貫して主張するのは、このような政治家が日本に現れ当選する可能性がゼロに等しいからです。
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