2009年6月29日月曜日

消費者金融を解禁する中国、規制する日本


先日の日本経済新聞が報じた中国、消費者金融を解禁 国内消費を後押し 英エコノミスト誌がアジア経済を扱った記事「望まれる“買い物中毒”」【注】によると、アジア諸国では家計の負債(≒個人の借金)がGDPに占める割合が概ね50%以下【注】だが、特に中国とインドは15%以下。健全過ぎる同割合の背景として、これまでアジア諸国に耐久消費財の購入を後押しするローンビジネスが事実上皆無だったことを挙げています。

左のグラフは、上記記事に添付されていた鉱工業生産を新興アジアと米国で比較したもの。落ち込み続けるの米国と対照的に、新興アジアは金融危機以前のレベルにまで回復しており、特に中国の貢献が大きいと見て取れます。

サブプライム問題への露出が少ない我が国金融機関の健全経営のお陰で、時の経済財政担当大臣をして「米国金融危機の影響は、蜂にさされた程度」と言わしめた盤石な筈の日本経済。金融危機の本場である米国よりもマイナス成長が酷いという皮肉に見舞われ、多くの政治家や経済学者は
「外需(輸出)依存の日本経済の体質の転換を怠ってきたツケが回ってきた。危機の今こそ、内需(特に個人消費)の拡大を。」
と、鬼の首を取ったかのように、財布の紐を縛りたくなるのは「節約は美徳ならず」というケインズの逆説を持ち出してきたものでした。我が国のポピュリスト知識人の戯言を実行しているのが、貯蓄大国(≒外準大国)の地位を我が国から奪った隣国中国であることもまた皮肉です。

我が国も、中国ほど大胆な個人消費刺激策(消費者金融会社の設立解禁だけでなく、既に実施済の耐久消費財購入インセンティブなど)を“逆輸入”すべきなのでしょうか。80年代までは、主要先進国中断トツの高さを誇っていた総貯蓄率【注】が急速に陰りを見せ、特に家計貯蓄率【注】で言えば、フランス、ドイツ、イタリアなどに抜かされているなどして現在OECD中14位に過ぎないこと【右グラフ】を認識したうえで、このようなポピュリズム政策と対峙しなければなりません。

金融庁による貸金業規制(特に借入額の年収制限といった総量規制)は、グレーゾーン金利(過払い金利、みなし弁済)の決着に追い打ちを掛けるものですが、業界規制という観点だけでなく、景気対策としては大きなマイナスである点はもう少し注目されるべきなのでしょう。しかし、中国の政策を真似る余裕が日本にはないのだという認識に照らせば、金融庁の政策は、隠れた意図も含め、実に正しいのです。
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【注】原題はShopaholic wanted
【注】韓国が例外。ちなみに主要先進国の多くは100%前後
【注】総貯蓄率=総貯蓄/国内総生産(名目GDP)。総貯蓄=貯蓄+固定資本減耗+資本移転(純)。 家計貯蓄率=家計純貯蓄/(家計可処分所得(純)+年金基金年金準備金の変動(受取))。家計純貯蓄=家計可処分所得+年金基金年金準備金の変動(受取)-最終消費支出

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