2009年12月17日木曜日

ギリシャの悲劇

早過ぎた「敗北宣言」 ?
「ドル安、ユーロ高」は行き過ぎている。早晩修正される筈。ユーロドルは1.3・・・台を目指すという持論が、まんまと外れて反省の弁をブログにアップしたのが 2ヶ月半前でした。
http://phxs.blogspot.com/2009/09/blog-post_24.html
やっぱり当たっていた。ブログを応援し続けて下さっているFX投資家の皆さん、おめでとうございます・・・と手放しに喜んでいるわけではないのです。ユーロドルの修正を予想したのは、欧州経済が苦境という名の様々な爆弾を抱えていることよりもむしろ、米国の商業用不動産に関する不良債権の未処理問題などに端を発し、米国発のリスクマネーが再び収縮するだろうという予想に基づいたものだったからです。一時は1.5台にまで再び突入していたユーロドル相場がトレンド転換したのは、第一のキッカケがドバイショックであり、続くスペインの格下げ、そしてギリシャの格下げであります。

敢えて先見の明があったとすれば、スペイン、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド(、イタリア)というユーロ圏の劣等生達の国々のことを頭文字を取ってPIGSと呼ぶのだという英エコノミストの記事を1年半前に取り上げていたことです。
http://phxs.blogspot.com/2008/06/blog-post_06.html

PIGSという、マネー業界では流行語になるのに時間が掛った言葉がある一方、今となっては口に出すのも恥ずかしいようなお笑い業界の流行語もあることに気付かされるブログでもありました。

ギリシャ悲劇を対岸の火事だと笑えない日本の財政赤字
有史以来、初の民主主義を実現した元祖先進国、ヨーロッパや通貨ユーロの語源となったエウロペの産みの親であるギリシャが、その域の通貨、信用の足を引っ張っているというのは皮肉です。そして、格付機関やギリシャ国外のギリシャ国債(もちろんユーロ建て)投資家が問題視している「財政赤字や国家債務の対GDP比の不健全なまでの大きさ」こそ、実に日本の数値と大差ないのであります。

「日本は外国債を出していない」すなわち「国内の貯蓄で国債が賄えている」という大言壮語が政府内外から聞かれますが、国内貯蓄が海外(の通貨建ての金融商品)に流出しない規制がない以上、根拠のない楽観だと唾棄せざるを得ません。

NTTの政府保有株をグーグルやアップルに(グーグルかアップルに)引き取ってもらえば、財政再建と技術立国再生の一石二鳥になるかも知れませんが・・・

実は難しい「信用リスク」と「市場リスク」の峻別
前回のブログでは、悪徳な投信が、信用リスクと為替リスク(⊂市場リスク)を混同させた提灯記事(広告)で金融リテラシーに乏しい一般大衆を一網打尽に騙そうとしているという話をしました。今週のもう一つの話題だったバーゼルの銀行自己資本比率規制。ここでも規制の骨格が出来た1987年以来、信用リスクと市場リスクは別々に管理しうるもの(すべきもの)という前提に立っています。しかし、今回のギリシャ悲劇は、かつてまたは現在のウクライナや、メキシコ、アイスランドのように、通貨の市場リスクと通貨発行権(シニョリティ)を持つ、または持てない国家(債務)の信用リスクが密接不可分で峻別が難しい事例が少なくはないことを示しています。

それにしても、今回のギリシャの事例はユニークです。他の国家破綻は、通貨発行権を持ちつつも、外貨建て債務を(当然のことながら主として海外投資家に)売り過ぎて、元利金の弁済が出来なくなったという点で自国通貨(為替)の暴落スパイラルを経た結末です。この点、ギリシャはユーロ圏に属した故に通貨発行権も持っていないし、外国向け債務も通貨はユーロ建てですが、基準金利(Euribor)に対するプレミアムが暴騰しているので、たとえギリシャ政府が、EU議会に財政規律違反に関わる違約金の支払いを覚悟してでも、自国通貨建ての国債を乱発することで、外国向け債券の借り換えを行うにしても障害が出る(「消化不良」を起こす・・・このようなシナリオは少なくともギリシャ政府首脳は公式には言及していないが)ということです。

つづく(?)
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