2010年1月6日水曜日

JALをぶっ潰すことこそがデフレ対策だ

逆じゃないの?と、殆どの方々に納得してもらえないであろう主張を、以下に整理してみたいと思います。

多くのゼネコンをゾンビ企業にさせた「邦銀の私的整理志向」こそ、「失われた20年」の元凶

1990年代前半に不動産バブルが崩壊し、不動産会社、住専、ノンバンクのほか、多くの中堅ゼネコンへの邦銀の貸出が焦げ付きました。邦銀たちの初期動作は債権放棄(≒私的整理)による企業再生。「債務超過さえ解消されれば、企業の継続が可能」という言い分でしたが、実態は法的整理(≒会社更生法や破産法などの倒産法制に基づく裁判所関与による財産処分手続きの適用)の結果、暴露される巨大損失を先送りしたかったからに他なりません。

本日の日経新聞の報道や解説で明らかなように、JALに対して、法的整理への賛成派は財務省と政投銀、反対派はメガバンクと国土交通省です。しかし、そもそも計算上では、間接金融の債権者が「法的整理よりも私的整理を志向する」のは道理に合いません。

(企業再生のための新たなスタートのために犠牲にしなければならない全体の損失額を所与とすれば)全体損失を間接金融の債権者が中心になって負担する私的整理よりも、経営者の首(+α)、従業員の雇用、OBの(3階建て部分の)年金、一般の商事債権者、そして何と言っても株主が一律に負担を分け合う法的整理のほうが、間接金融の債権者の負担は格段に減る筈だからです。

「新たなスタートを切る必要はない。JALブランドの継続、経営の連続こそが最大損失額を極小化する」と私的整理論者の抗弁が、外国のキャリアの例を見れば、詭弁であることが明らかでしょう。メガバンクの巨額の債権が担保付であるために、破産法(⇒別除権)か会社更生法(⇒更生担保権)かで計算が変わってしまう点は留保したとしても、です。

不良債権の引当不足の露出を嫌がり、抜本的なリストラの先送りという、メガバンクたちの、道理に合わない計算外の目論見は、株主への背任と言えます。

「総合」には要注意

もう一度、ゼネコンの話を思い起こしましょう。ゾンビと化した中堅ゼネコンの多くも、結局最後は法的整理等で消滅して行きました。結果、20年単位で計算すると、メガバンクたちは初期動作以降幾度か債務免除に応じた分、負担額が嵩んだわけです。「債務超過さえ解消してあげれば、企業再生が可能」という理屈が間違っていたのは、実はゼネコンの経営不振が計算上の資本不足が焦点ではなく、ゼネコンの存在意義から目をそらしてきた、ゼネコン経営者と銀行経営者の怠慢の結果です。

建物を実際に立てているのはゼネコンではありません。下請けであり、孫請けであり、その現場で働く鳶職人などの汗と血と涙です。

総合建設業だけでなく、総合商社とか、総合証券とか、総合感冒薬など、われわれ日本人は「総合」という言葉にいよいよ気をつけないといけません。

JALの私的整理を選べば、また新たな「失われた20年」に・・・

貸手と借手が共に経営責任を逃れ、特に貸手の大手銀行は公的資金の「頸木」を恐れたがために、不良債権(≒不要事業)の処理の先送りを演じ続けたことこそが、失われた90年代、00年代の原因の核心部分です。建設業だけではなく、不動産業や金融業でも、情報技術の飛躍的な(非連続的な)進歩によって、付加価値のないホワイトカラーはもっともっと抜本的に淘汰されて然るべきだった。これが未だに往生際悪く、しぶとく終身雇用制度にしがみついているのが緩やかなデフレの元凶です。

元旦未明のテレビ朝日「朝まで生テレビ」で与党側出演者も野党側出演者も、デフレの元凶は白川総裁率いる日銀の無策だと欠席裁判をしていたのは、残念ながら政治の現場も評論の世界も我が国はハングリーなインテリジェンスを欠いているという現実を晒すものでした。

中小零細企業やベンチャー企業には、銀行は債権放棄などしてくれません。私的整理を志向するのは、JALやダイエーのような、バランスシートが肥大化し、人事も財務も延び切った大企業に対象は限られます。経営判断のミスが許される、経営判断の先送りが許される、ブランドに安住し、楽な割には給料が高いこのような大企業への新卒入社を、高学歴の人達の殆どは、中小零細企業よりも、ベンチャー企業の立ち上げよりも志向するでしょう。

そうは言っても、日本の強みは比類なき技術だと多くの人は言います。しかし、その日本の総合電機メーカーから、iPhoneも、Google携帯(=NexusOne)も出てこないのは、優秀な頭脳がベンチャーを志向することを割りに合わなくさせている、この国の仕組みではないでしょうか。

既得権益を打破し、創意工夫にこそ資金が集まる。中小零細の事業者にも何度も再チャレンジの機会が与えられる、そういう仕組みに変えていくことが、マクロ経済政策で国家財政を醜くすることよりも、遥かに有効なデフレ対策です。

JALには会社更生法で。藤井財務大臣の病状の回復をお祈りします。
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