2012年10月1日月曜日

薄煕来と毛沢東と反日デモ

スペインの国債の利回り以上に心配なのは、中国の景気後退が想定外のハードランディングとならないかどうかだ。多くの真面目な企業経営者や投資家は共通しているのではないかと思います。

薄煕来の公職追放の主たる原因は、不正蓄財とその財産の海外逃避の画策に関わった妻によるイギリス人協力者殺害疑惑です。

この不正蓄財の金額は、我が国で毎年夏と冬にジャンボ宝くじの一等賞を取り続けたとしても、何十年も掛かるという、まさに日本という小宇宙においては天文学的数字なのです。

たぶん99%以上の日本人は、人間が一生にどんなに贅沢な暮らしを続けても食い潰すことができない程度の蓄財にはさすがに関心がないと思います。そのレベルの何十倍、何百倍の蓄財をしたくなる心境というのを無理矢理想像すると、日頃顔を突き合わせている「同僚」とのあいだで、嫉妬と競争を繰り返しながら、モラル劣化を増幅させつつ、不正蓄財の表面上の数字を膨らませてきたということでしょうか。

もしそうだとすると、中国共産党のエリート部分の貯金は大変なレベルであり、中国の国内の貧富の格差は、一般に公開されているジニ係数よりもっとひどい数字ということになります。

共産主義を錦の御旗としつつも、実際には、暴力と陰謀によって中原を支配した過去の王朝となんら変わらなかったのが毛沢東そのひとです。しかし、貧富の格差が問題となり不平不満として実感されるときに、ひとびとが求めるのが、あの大躍進や文化大革命のころのほうが良かったという幻想とそれに基づく集団催眠的な示威活動です。

それをまた確信犯的に利用しようとしたが最後は挫折したのが薄煕来だったのかも知れません。

聖人君子たちによる禅譲の時代が終わったあとの、殷の時代以降の中国の王朝の変遷は、上述のごとく、地球上の他の地域には見られない抜本的で暴力的な政権交代の連鎖です。その歴史の端末に位置するのが中国共産党になります。共産主義の仮面を被った私利私欲の重商主義者集団の蛮行は、さすがにここまでインターネットが発達した社会のまえでは脆いように思えます。

尤も、毛沢東回顧のトレンドと集団催眠の力は大きい。尖閣問題も、そこに対する絶好のアシストになっているとの反論もあるでしょう。

日本の場合は、バブル崩壊を失われた20年の真犯人のように呼ぶのが一般的ですが、わたしはバブルの崩壊は富の再分配に大きな役割を果たしたと思ってもいます。しかし中国で同じことが起こった場合、日本のような「実質的共産主義」的世界が実現するでしょうか?

わたしは全く逆で、格差問題が臨界点を超す恐れがあると考えています。

日本の場合は、バブルとその崩壊は、ほとんどの知的エリートと経済エリートは翻弄されたほうの立場だったのに対して、中国の場合は、エリートたちによる集団的かつ確信犯的な相場操縦であったと見られ、リスク資産の分布は、意外なほど、(超)富裕層には少ない、、、つまりもう逃げ切りが図られている、、、と考えられ、もしそれが本当だとすると、これからの中国は、既に許しがたい貧富の格差がさらに広がり、政治と経済のインフラがぶち壊される前代未聞のリスクがあると思われます。
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