2013年3月18日月曜日

アベノミクスに水を差すキプロス島の取り付け騒ぎ

土日の海外メディアは、バチカンの新法王フランチェスカ一世による現代イタリア語での演説や、インドや中国など、様々な話題がひしめく中、何と言っても、かれこれ4年に及ぶユーロ危機のなかでもはじめての一般大衆預金のペイオフ強制実施の決定と、それに憤慨してATMに列をなすキプロス島の人々の話題を繰り返し報道していました。

債権カットの率で言えば、ギリシャのほうが派手でしたが、こちらはギリシャ国債が対象。キプロスについては、大口と小口で若干比率がことなるものの、全預金者を対象とする一律カットです。

欧州時間の土曜日未明に、その案を飲んだキプロス政府は、用意周到にも週明け(キプロスは月曜日も祝日で、銀行営業日は火曜日)にも預金の現金引き出しが出来ないように措置を講じたとされています。

したがって、理論的にはATMに並んでも仕方がないところですが、示威行動を起こすには小さい島の銀行窓口が並ぶ目抜き通りはうってつけ。直近の報道では、現在示されている預金カット率(6.75%~9.9%)の再見直しをかけて同国首脳がドイツ、ECBを含む「預金者負担を条件にした金融支援」を主張してきた向きと、もう一晩二晩徹夜に付き合ってくれと言わんばかりに掛け合おうとしているようで、小国の大騒ぎは効果があったのかも知れません。

2008年以来、金融危機が起こるたびに、モラルハザードと致命的かつ瞬間的デフレとのあいだでどのようにしてバランスをとるかを分析議論してきた当ブログ。欧州危機においては、先例となるアイルランド、ポルトガル、ギリシャでは手を付けなかった預金者のモラルハザード問題についに手が付けられてしまったというから、たいへんです。

健全な金融システムと成長可能なマクロ経済を導くために必要な教訓を得るための実験かも知れませんが、実験室が小さくて密閉されているから爆発しても平気だというのは大きな間違い。例えが悪いですが、これは実験は実験でも、核実験みたいなものです。

スペインやイタリアなどに飛び火しかねないということを十分に恐れておく必要はあるのです。取り付け騒ぎとは、そういう性質のものであり、あってはならない風説の流布と大いに関係します。

「七転び八起き 毒入り餃子」で記事を検索してみてください。

それでも、わたしは、この週明けのユーロその他の通貨のギャップダウンの始まりは恐れていたよりはまだ小幅で良かったと胸をなでおろしています。欧米の報道機関によっては、「これは終わりの始まりだ」というコメンテーターもいるのです。しかし、個人的には9割以上の確率で、ドイツもその他債権国も国際機関も、理屈をつけてキプロスは例外にしようと主張すると考えています。さまざまな背景によってキプロス経済は異常だったのです。アイルランド以上にGDP規模に比較しての金融セグメントが肥大化しすぎていたこと、預金者の多く(もっと言うと住民の多く)がロシア由来であることなどなどです。
  人口       (百万人) GDP   (兆円) 銀行預金 (兆円) 銀行預金/GDP (参考:ひとりあたり 預金残高)
日本 126.5 475 590 1.2
4,664,032
キプロス 0.8 2 84 42.0
105,000,000
(注)出典:全国銀行協会、ウィキペディア、ウォール・ストリート・ジャーナル


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