2008年9月30日火曜日

根回しと造反

●7000億㌦金融安定化法案、下院で否決(各紙)
共和党からの造反が相次ぎ、大差で否決。米国株はダウ平均の102年の歴史上最大幅の下げ(下げ率では9.11テロ以来最大)。

昨夜、フェニックス証券オンラインセミナーの“結論”として申し上げたのは、「7000億㌦のパッケージが完全燃焼しようと不完全燃焼に留まろうと、米ドルは“絶対評価”で売り!」という内容。

「ばらまき政策」を肯定⇒ハイパーインフレ⇒米ドル暴落

「ばらまき政策」を否定⇒デ・レバレッジ⇒デフレ・スパイラル⇒米ドル長期下落

国際協調介入という雑音の可能性は寧ろ大きくなりますが、米国の現政権が孤立するならば、通貨防衛のために打つ手は殆どないという見方です。

先日の中曽根康弘氏の著書引用にあります通り、一般の日本人の認識に比べて、わが国の改革総理大臣の権限は大きいのですが、逆に名実共に国家元首である米大統領の権限は意外なほど大きくないのです(いわゆる拒否権はあるが、否決された法案を覆す権利はない)。法案は修正して一から出し直すしかないということです。

自らが率いる党の造反で異例の否決を目の当たりにしたブッシュ政権は終わりの日が近いから良いようなものの、民意を読み違えて同法案に乗っかってしまった両大統領候補にとっては更に深刻な致命傷なのではなかろうか。今後の具体的な見通しについては、調査+考察の進展に応じて更新して参ります。
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2008年9月29日月曜日

ビール会社のようには売れないベルギーの銀行

●ベルギー系大手銀行Fortis、破綻処理間近?(9/29WSJ)

19世紀設立の伝統ある大手銀行、ベネルクス3国主導で救済か。

週末、同行に関する報道は二転三転。厳しい財政規律を求めているEU憲法。加えてユーロ圏の各国中央銀行はECBの出張所になりさがっており、勝手に同国政府発行の国債を引き受けられる筈がない。それ以前に、民間企業、とりわけ民間金融機関を公的資金で救済するためには世界中で最も高いハードルをクリアする必要がある。

したがって、Fortisについても、資産売却、営業譲渡、身売り(オランダ系INGやフランス系BNPパリバの名前があがっていた)のいずれかしか選択肢は無いと一旦は報じられていた。が、生命線を維持するにはベルギー、ルクセンブルグ、そして恐らくはオランダが国家レベルで関与するしか無いと急展開。

米ドルの機軸通貨性に疑いが持たれつつある今日この頃、ユーロを参考にして、東アジア圏も統一通貨を導入すべきと論ずる“専門家”が出現しています。天変地異でもない限り、中国、韓国、香港、フィリピン等をまとめるのは無理。残念ながら、日本自体が中央銀行の独立性や裁量的かつ柔軟な財政出動を放棄することはあり得ないのでは。

今回のFortisの事案、ユーロという通貨の難しさを改めて思い知らす、多分ユーロ通貨統合以来初めて試練ではないかと考えられます。

●米国金融システム救済法案、暫定合意は達成?(9/28WSJほか)
今夜20:00からフェニックス証券オンラインセミナー第6回で今後を占います。どうぞご覧下さい。
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2008年9月26日金曜日

貨幣錯覚は幻想に過ぎない

●麻生内閣、支持率53%―衆院選の支持は自民と民主が伯仲(9/26日経)
あれほど盛り上がりに欠けた自民総裁選でも効果があったというべきか、選挙民が愚弄されているというべきか、選挙民が阿呆だというべきか?米国での7000億㌦法案で「ばらまき政策」への抵抗がなくなっている雰囲気もプラスなのでしょうか?

「ばらまき政策」が意味を持つのは、勤労者に支払われる名目賃金の伸びが物価上昇に追いついていなくても平気または気付かないことが前提。これを貨幣錯覚money illusionと言いますが、情報化社会⇒ネット社会においては貨幣錯覚を前提とすること自体が幻想。「ばらまき政策」で作為的にインフレ経済を実現しても、それ以上に名目賃金が上がらなければ、勤労者は豊かさを感じ得ない。物価統計の取り方を変えるという奥の手はあるでしょうが、それを言うなら作為的インフレを起こさなくても勤労者は今直ちに豊かさを感じることが出来ます。ヘドニック法、、、なんて言うと難しくなってしまいますが、敢えて想像してみて下さい“5年前と同じ性能の”パソコン、デジカメ、薄型テレビ、携帯電話を。。。これらに対する支出が家計に占める割合に沿って物価バスケットに反映され、低価格化に高品質化を加味して計算すれば、我が国の実質賃金、実質成長率は恐ろしく高くなることでしょう。「ばらまき政策」は無意味なうえに、モラルハザードをもたらすので百害ありて一利なし、というのが持論です。

金融インフラの根幹であるインターバック市場。インターバンク市場からの調達が許される退屈で平凡な商業銀行業務と愚直に手数料を追求するブローカー業務または投資銀行業務。これらをヘッジファンド業務(含む裁定取引)や投資業務と切り離すことで、インターバンク市場は健康を取り戻せる筈。決して7000億㌦は必要ない。投資銀行と呼ばれる金融機関が“投資銀行業務”と“投資業務”をごっちゃにしたところが、過当競争下の禁断の果実だったのではないでしょうか

残念ながら筆者の意見は極々少数派。ここまで来たら7000億㌦を通さないと、インターバンク市場も含めどうにもならないのかも。。。

そんな中、
●英中央銀行、インターバンク市場への流動性供給を大幅削減(9/25FT)
先週が£250億⇒今週は£50億£。インターバンク市場の参加者がイングランド銀行に低金利で預けるくらいならお互いに貸し付け合ったほうがましと判断しているため、とFT紙。

最後に、日本時間昨夜11時台のCNNで、7000億㌦法案の是非について視聴者アンケートを行なっていました。結果は53:47で反対多数。メールで寄せられた意見のなかに、「叩き上げのアジアの企業経営者が、その何倍~何十倍もの役員報酬を貰っているハーバードやウォートンのビジネススクール卒業者よりも優れていることを思い知れ!」というのがありました。アジアに日本は含まれるでしょうか。
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2008年9月25日木曜日

7000億㌦の行方

●今週末予定の大統領候補による討論会、マケイン候補が延期を提案するもオバマ候補は拒否(9/25WSJ)
「今こそ討論しなければならない時だ」とオバマ候補。マケイン候補は議会に戻り7000億㌦の金融“システム”救済法案の審議に参加したいので、木曜日の選挙運動も中断したうえでの提案だったのだが。

ポピュリズムはモラルハザード批判が苦手。オバマ候補も、貸し手批判は出来ても借り手批判は出来ない。加えて、筆者の知る限り、ファニーメイとフレディマックにも民主党の仲間は多い。

ちなみに、WSJ/NBCの共同調査では、オバマ/マケインの支持は現在48対46と僅差。同調査は7000億㌦計画についても数字を明かしています。31%が賛成、33%が反対、28%が意見無しとのこと。

●米中古住宅販売、8月は再び下落(9/24WSJ)
市場予想を下回り、発表直後はドル安、株安。

ところで、米国の住宅価格というのは幾ら位なのでしょうか。米国は大きな国で、ニューヨークもあれば田舎もある。格差社会でもある。そこで平均値では誤解を招きますので、中間値(メジアン)で表しますと、去る8月の1戸当たり価格の中間値は203,100㌦だそうです。昨年同月は224,400㌦でしたので1年で約1割も下落したことになります。

筆者はこれから、日本の住宅価格の中間値、それと住宅ローンとの絡みで、主として勤労者世帯の年収の何倍(何年分)まで銀行が貸して住宅取得が可能になっているか、米国と比較するべく調べてみたいと思っています。調査結果が月曜日間に合えば、オンラインセミナーでお話しする予定です。
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