2009年2月5日木曜日

日本綜合地所、会社更生法を申立て

不動産、特に居住用不動産の壊滅的な状況については今日は語りません。

何と言っても、日本綜合地所が話題になったのは、新卒採用の内定切り。

派遣切りと並び、非人道的と非難を浴びた、内定切りも、

「今思えば、倒産の可能性が高まった時点で別の就業機会を一刻も早く探したほうが良いと警告を促したのは親切心だった」

という意見もあれば、

「大企業が学生に内定を出す時期が早くなり過ぎているのがそもそも問題だ」

という意見もあるでしょう。

内定を出すのも取り消すのも、新卒で大企業に入って、つつがなく暮らせば、定年まで面倒を見てもらえるという不文律(判例法)に多くの日本人が依存し、またその頸木から逃れられずいることの裏返しに過ぎません。

当ブログが繰り返し申し上げている、

「派遣切りが非人道的だとしても、派遣の範囲を狭めれば解決できるものではない」

すなわち、本来は大企業の正社員にも、根こそぎ、雇用調整や産業構造の変化に応じて離職や転職を強いるのが資本主義の健康な一面であるはずが、その機能を、非正規雇用に皺寄せしているという指摘がここにも当て嵌まります。
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2009年2月4日水曜日

エルピーダ、公的資金の申請を検討

日経のスクープは、一般企業の延命のための政府関与の第一号となるのか?

国内外で報じられている、

●“Buy American"政策に対し、EUや日本がWTO提訴を検討(2/4FT、日経など)

というお互いの保護主義を論う(あげつらう)動きと並べて見ていかなければなりません。

半導体メモリーの代表格D-RAMは、厳しい国際競争と、韓国の形振り構わぬ産官一体運営で、寡占市場に陥っており、いずれも韓国系の上位2社で50%弱のシェアを占める。エルピーダは、これらに次ぐ3位。1999年に日立とNECの半導体製造部門の統合で誕生した現在では国内唯一の専業メーカーは、韓国勢などとの競争で苦戦したが、現在の坂本社長のターンアラウンドでシェアを回復。2008年第一四半期のシェアは18.9%。

この間、かつては日本の電機メーカーが席巻していた半導体製造分野から有名企業が次々と撤退(三菱電機はエルピーダに統合)。エルピーダと技術提携している独キマンダは先月経営破綻。

公的資金による民間企業の破綻回避については、当ブログが毅然と主張するモラルハザード問題をどこまで犠牲にできるかという価値観に絡みます。与党政治家の皆さんの意見としては、せめて金融機関に限定すべきという考え方が少なくともかつては強かった。本件は、エルピーダと同盟関係にあったとは言え、独キマンダは野垂れ死に、日本のナショナルフラッグは守るという態度が、EUから見られて大丈夫か?

Buy Americanを唱え始めた米国にもマイクロン・テクノロジー(旧テキサス・インスツルメント)があり、黙って見てはくれないでしょう。ちなみに、我が国ではエルピーダの工場は東広島に、マイクロンの工場は兵庫・西脇にあります。「国内に競争相手がいないので、モラルハザード問題は軽微」とはいかないのが企業城下町の論理。資本が国内であれ国外であれ雇用を守ってくれれば良いのであって、不公平を許すのは簡単ではありません。
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2009年2月3日火曜日

BNPパリバ・ショック、再び

●資金流出の懸念-中国(2/2ITH)
中国国民が海外送金で資産を逃避させる動きや、中国国内に投資していた海外資本が一転引き揚げる動きが加速していると報じています。

●出稼ぎ農民の7人に1人が失業-春節後の中国(2/2FT、IHT、WSJ、日経)
暴動が起きてもおかしくない状態だとFT紙。社会不安が、資本逃避の一因だとは上記IHT紙。

資本逃避の最大の犠牲者は、東欧や中央アジアかも知れません。

●カザフスタン、国内最大の銀行を国営化へ(2/2FT)
国営化後、ロシアの国営貯蓄銀行への売却も検討だとか。本件で解任される銀行の会長は、野党立ち上げに関与したり、汚職の疑惑で、7年前に逮捕された経験を持つ。銀行会長復帰後も、政治活動は禁止されていたとか。

いわゆるBNPパリバショック(2007年8月)の時点では、カザフスタンの銀行全体で450億㌦以上もの海外資本を調達していたそうです。理由は、国内の預金や借入よりもコストが安かったから。昨年12月ひと月だけで、海外資本の引き揚げと預金の取りつけ騒ぎ、そしてやむを得ず進んだ貸し剥がしで、カザフスタンの銀行全体で1.54億㌦の純損失を招いたとされます(上記国営化のために投与される公的資金は20.6億㌦)。

BNPパリバと言えば、

●不正利益没収へ-アーバン問題で日証協、過怠金10億円超も(2/3日経)
業務改善命令に留めた金融庁よりも自主規制機関の処分のほうが厳しくなった点に、日経は着目。

ちなみに、私の着目点は「外部検討委員会という仕掛けまで作ったのに、金融庁の業務改善命令を免れなかったのは、●●●●の力不足だ」とトップを批判する下々の金融リテラシーの低さ。過怠金云々ではなく、かつてのシティバンク同様、日本から退場命令が下される程度の悪質な事犯だという認識は、証券六法を読んだことがあるかないかの問題ではなく、証券会社の役職員として肌で感じなければいけない常識。実行犯本人は論外として、そこに牽制すべき法務、監査のイノセンスこそ、セレブな勤務環境や報酬に値しない。
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2009年2月2日月曜日

双子の赤字、ニッポン

●温家宝総理、更なる景気刺激策を約束(2/1FT)
昨年暮にぶち上げた4兆元(約60兆円)の財政パッケージに加え、新たな対策を検討。国内経済を刺激し、個人消費に火をつけたい、とFT紙の独占インタビューで。だからと言って、「中国国内に淀む莫大な貯蓄が世界金融危機の一因だ」という馬鹿げた非難には一切与しない、と。

景気刺激の方法として、人民元の切り下げをハッキリとは否定しなかったものの、中国政府が人民元相場を「均衡のとれた妥当な水準」に保つべく努力してきたことを強調。「多くの人々はこの点に気づいていない。もし人民元がグローバル市場に翻弄され(ユーロ/ドルやポンド/ドルなどのように-筆者注)ジェット=コースターみたいな乱高下をしていれば、事態はより深刻だったであろう」と語った。

「今後も米国債を買い続けるか?」というFT紙記者の質問にはハッキリと返事せず。「外貨準備は国内需要刺激のために必要。一方、そのためには既存のドル建て資産の価値を維持しなければならない」。

これこそが、日経CNBCにて申し上げた、中国政府の外貨準備にまつわるジレンマです。ちなみに温総理は、IMFや世界銀行への融資目的で外貨準備を使ってほしいという世界の期待に応えるつもりはないとピシャリ。これら国際機関(という名の米国傀儡組織-筆者注)の組織改革が先だろうと語った。

日経CNBCと先週のオンラインセミナーでお伝えしたもう一つのメッセージは、

「中国は、景気刺激のための財政ばらまき政策が効果的かつ実効性が高い、世界で唯一の国」

であるということ。財政赤字、貿易赤字、家計赤字の国では、ばらまき政策は高インフレを起こすだけ。これを機会に生活水準を見直すしかないのです。日本は米国に近いでしょうか?中国に近いでしょうか?直近は、家計以外の二つは赤字。いわゆる双子の赤字に陥っています。

2009年の為替を見通すために、人民元VS米ドルは、難しいながらも重要な視点。この機会に是非、

「“為替力”で資産を守れ」(アスキー・メディアワークス、1,260円)

を是非お読みください。

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