2009年4月6日月曜日

北朝鮮“ミサイル”報道と台湾統治

ブッシュ前大統領が、イラクとイランと北朝鮮を悪の枢軸と呼んでから7年以上経ちます。緊迫と混迷の連鎖から抜け出せない中東情勢に比べて、極東情勢は極めて対照的です。

ミサイルか衛星か?流石のグーグルアース、もとい、米国の軍事衛星でも識別は不可能。中国とロシアの拒否権発動の可能性は高く、イラク戦争のように国連安保理決議なしで米国が戦闘状態に入るとは考えにくい。その理由は、北朝鮮が核を持っていること。日本にも朝鮮半島にも油田がないこと。これら二つの前提が中東と異なるからでしょう。

日本が(現在の技術と資源相場を前提にすれば)無資源国であることは、地政学上は、不幸中の幸いと言わざるを得ません。

北朝鮮“ミサイル”報道で終始した週末の地上波テレビ。そのなかで、NHKは日曜夜9時、NHKスペシャルで、我が国による台湾の植民地統治を取材していました。第二次大戦敗戦により我が国では廃棄焼却された台湾統治の資料が、台湾総督府には残っていた。その古文書を手掛かりに、日本政府に協力した台湾人、台湾議会設立運動を企てるも挫折した台湾人の御子息を探し当て、インタビューに応じてくれていました。証言が上手な日本語で語られていただけでなく、難しい話をしたり、学術的な文章を書くことは今でも日本語でしか出来ないことを目に涙を浮かべて告白するご老人の姿。第二次世界大戦で日本の臣民として南方戦線に駆り出された人達、夥しい数の同僚の戦死を目の当たりにしつつ生き残った元台湾人“日本兵”の方々が教育勅語を諳んじている姿。

朝鮮半島や中国と比べて、台湾は反日感情が薄いという“常識”を打ち砕く内容。但し、この番組、決して南京大虐殺的な歴史観を押し付けるものではありません。先進国の仲間入りをしたい(しなくてはならない)明治政府にとって初体験の植民地統治のモデルを(当初は同化政策だった)フランス⇒アルジェリア型にするべきか、逆にイギリス⇒インド型にすべきか議論の末、当初は折衷案と取ったこと。ところが日中戦争突入により、漢民族が敵性民族となったため、同化政策に切り替えられた、という展開。

昨日のテレビ朝日の番組で「“ミサイル”発射は国威高揚と体制維持だけが目的」と言い切った田中均元外務審議官。氏の北朝鮮との交渉は、当時、生温いと批判されたものでした。消されることのない歴史、不可抗力により与えられた各国の状況を考慮すれば、生温い対話という物言いは当て嵌まらない。寧ろ、批判を繰り広げては、北朝鮮の面白映像を興味本位に流して視聴率を狙う地上波テレビのビジネスモデルが未だに生き残っている規制環境こそ生温い。
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2009年4月3日金曜日

G20、ECB1.25%へ利下げ、そしてFASB

G20金融サミット閉幕、0.25%に止まった欧州中央銀行(ECB)の利下げ幅、そして今夜は注目の雇用統計と材料目白押しの今週末。昨夜の米国株連騰のMVPは、G20でもなければ、ECBでもなく、FASB(米財務会計基準審議会)です。

早い話が、「金融機関の不良債権や塩漬け有価証券の含み損をちゃんと出さなくても良い」というニュースに株式投資家が好感したということ。

御上が銀行の粉飾決算を黙認するから、時価総額が上がるという現象に、納得の行かない読者の方々も少なくない筈。

しかし、相場はトレンドが一番大事。理屈は頭の片隅に仕舞っておき、祭りには参加したほうが賢明です。

見た目の株価がどうであれ、びくとも動かない大型不動産の売買や、改善の兆しがない雇用情勢、そしてその背景にある世界の各大型金融機関が抱える不発弾の数々。この厳然たる事実がある限り、どこかで大規模調整はあります。株式や外貨を買い遅れたと嘆いていらっしゃる方々。後悔する必要は全くないと思います。

とまれ、我が国の「失われた10年」1990年代の金融敗戦のMVPこそ、押し付けられた時価会計です。押し付けておいたルールが自国に不利となると、あっけらかんと変更する。このような大国主義に文句のひとつも言えず、「これで株価が上がった。英断だ」と褒めちぎり、我が国も真似してみますか?という政策担当者の体たらくを批判する前に、迎撃ミサイルはすべて日本製で賄っていない現状を直視する必要はある。しかし現実は甘くはありません。一昨日来ブログで取り上げているウクライナこそ、屈指の豊かさを誇る穀倉地帯を背景に、気骨を以って大国と向かい合い、よってまた慢性的に経済危機とも向かい合っている実例です。
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2009年4月2日木曜日

シティグループ株に群がる米国個人

★落ちてくるナイフを拾うな!

というウォール街の古い諺を無視しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている現象とは、シティグループ株の人気の過熱振り。昨年10月末から80%下落した同銘柄は、去る3月5日に底(1.02㌦)を打ち、昨夜の引け値は2.68㌦(↑5.9%)。

某ネット証券一社だけの数字ですが、同株式の出来高は、3月が9.3百万株と、2月の3.4百万株から倍以上に人気化しているとのこと。

★値が飛ぶから面白い。

株価下落で「小口化」したことだけでなく、その「投機性」が魅力なのだとWSJ紙。値段が飛ぶから面白いのだと。外国為替証拠金(FX)取引で、かつて英国ポンドが人気だったのと同じ理屈で根拠なき熱狂ということか。

シティグループ株がどれくらい値が飛ぶのかと言いますと、月曜日が11%下落、火曜日が9.5%上昇。で、昨日は上述の通りですから。

ちなみに、(最初で最後の!?)三角合併のお陰で、シティグループ株は東京証券取引所にも上場しており、我が国の普通の証券会社でも取引可能です。しかし、七転び八起きとしては読者の皆さまに銘柄推奨はしません。オバマ政権のモラルハザード政策は国内でも人気を失いつつあるだけでなく、今週末のG20でも叩かれそうです。金融システムの安定とモラルハザード回避と両立は大変難しいうえ、イベントリスクと情報格差に挑戦してこの種の投機に向かうのはリスクリターンのバランスが悪すぎる。

★お勧めは??

それでも何か宝くじ的な適当な投資対象は無いですか?と聞かれたら、同じシティグループでも半値近くまで下落した社債(ユーロ円債やサムライ債)がお勧め。完全国営化で株券が紙くずになっても預金と債権は保護される可能性が高い。

これでも十分なモラルハザードですが、預金債権保護まで否定すると世界は修羅場となります。それから、我が国のREIT

残念ながら、いずれも出来高が少なく、シティの普通株ほど短期売買には向きません。ただし、REITについては倒産したパシフィック・ホールディングス系の二投資法人が例外的に出来高が多くまた極端に割安なため、シティ株と同じ現象が起きています。REIT分野は銘柄が多すぎて、今後規制緩和により合従連衡は必定と考えられています(合併時の負の暖簾代を配当に回さなくても法人税が掛らないように税制改正は既に決定済)。
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2009年4月1日水曜日

過去最悪の日銀短観、国家破綻危機に学ぶ

朝8:50に発表された日銀短観。特に注目されていた大企業製造業の業況判断指数は▲58。予想以上の悪化で1974年以来の短観の歴史で最悪の数値。

為替は直ちに円安に反応するも、一瞬にして買い戻され、その後は短観発表前に比べ寧ろ若干の円高水準。

日経平均は朝からプラス圏。

エイプリルフールねたに落とすつもりはありません。それを言ってしまえば、四回に一度は短観は四月馬鹿になってしまいますから・・・

大企業製造業の閉塞感と、物質には満ち溢れているが雇用不安から逃れたい=年金が出るまでクビになりたくないという怯え。これは大いに関係があるようです。

松下幸之助氏が二股ソケットを開発し、安藤百福氏が即席めんを開発したころ、意欲ある日本人は「こんなものがあったら便利だな・・・」というヒントを探しまくり、夢をひとつひとつ実現していったのだと思います。ドラえもんの人気は衰えないにもかかわらず、もう一歩上の物質文明のステージにあがることが死活問題だという意識は日本人にもなければ、これまでのメイド・イン・ジャパンの御得意様諸外国にもないという事実から目を背けるわけには行きません。

児童ポルノで摘発された問題のアフィリエート広告。先ほど、アフィリエートのASP会社のご担当と話をしたら、最近伸びている分野は化粧品と健康食品を始めとするEコマースだそうです。

「歴史は繰り返す」という諺と対立するのが「人類はその叡智によって果てしなく発展し豊かになれる」という歴史観。しかし、英国産業革命に端を発する工業文明は、繰り返しもなければ、際限なき発展も有り得ないのではないかという、上記ふたつとも異なる歴史観もあるのではないでしょうか。

ところで、国家破綻危機の事例として、七転び八起きブログではアイスランドを徹底的に取り上げて参りました。これは似非金融立国の熟れの果て。金融が(原則として)虚業であることを忘れていい気になる国・企業・役職員にとっては他人事ではありません。問題は工業立国、貿易立国もまた他人ごとではない事例があることです。

それはウクライナ。19世紀まではヨーロッパの穀倉地帯と呼ばれ、20世紀はソ連の穀倉地帯と呼ばれた、大農業国という印象の強かったウクライナは、21世紀に入り急速に工業化します。昨今の失業率、自国通貨下落、経済成長率のマイナスは、世界の最悪水準であり、10年弱の工業化の恩恵を逆回転させるほどの勢い。混乱の陰には、殆ど常に、積年のロシア関係という外交等の要因が控えているとは言え、それ故、我が国には参考にならないとは言えません。ちなみに、我が国の貿易依存度は10%程度と決して高くないことは以前より当ブログで強調して参りました。対するウクライナは、50%近くにのぼっており、穀倉地帯の印象とは大きく異なります。

当ブログでは、ウクライナ問題を定期的に取り上げていくことにします。
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