2009年4月30日木曜日

豚インフルと悪性インフレのストレステスト

Googleでの検索順位が急上昇の「パンデミック」と「フェーズ5」。パンデミックな感染症とインフレーション(通貨の紙屑化)は、伝染が伝染を呼ぶ(期待が期待を呼ぶ)スパイラル現象を起こしつつ蔓延しうるという共通点があります。

ワクチンで意図的に抗体を作ったり、抗生物質(効かないものもある・・・)で対処療法を試みても、ウィルス側が進化することで耐性を確保し、人類側とのイタチゴッコが収まらない。インフレ(デフレ)期待の蔓延を喰い止めようと政策側が関与しても、期待通りの効果が得られない(不発に終わるか、副作用が強すぎるか、何れかの極端に陥る)等、万能の処方箋が無いことに酷似しています。

パンデミック退治も、インフレ(デフレ)退治も、すべて政府の責任だ。。。と論ずるのは簡単。しかし、いずれも人類が互いに接点を持ちながら或る程度自由に経済行為を続けるための宿命または自由社会の対価との覚悟も必要。

「伝染が伝染を呼ぶスパイラル」と書きました。相場に譬えれば、ロスカットがロスカットを呼ぶクラッシュ。「市場は需給が均衡することを前提として機能しているので、均衡しない場合には介入する必要があるのだ」という考え方で、株価のPKOや、為替介入がしばしば正当化されます。しかし、バブル崩壊過程が痛みを伴い過ぎるとして、それを反省材料として、そこまで酷いクラッシュは再現させないように、今後は預金保険というモラルハザード下にある銀行にはレバレッジ規制を掛けるという政策の介入はあり得るでしょう。が、別のモラルハザード(良いとこ取り)を市場参加者に助長させるような相場介入を正当化する理由にはなりません。

バブルに塗れなかった禁欲的な投資家が自らの利害で相場に登場するタイミングは、政策の介入の可能性で疑心暗鬼にさせることで、政策意図とは反してかえって遅くなる。このことこそが、日本の失われた10年の教訓であり、現在、米欧が他山の石とせねばならない点。

ワクチンも抗生物質もなかった中世後期のヨーロッパでは、確かに黒死病で人口が激減しました。感染する人が増えれば増えるほど自らも感染する確率が加速度的に増える状況で生き延びることが如何に困難かという実例です。しかし、黒死病を生き抜いたヨーロッパ人が現実少なからず居た(居る)こと、そして彼らは黒死病に犯されなかった地域の民族と比べて、人類にとって未解決の別の感染症、例えばHIVに対する抵抗力を有している(これは抗体が遺伝しているわけではなく、もともとの遺伝子が両感染症に抵抗力があったという意味。欧州全域の全人口が黒死病の“ストレステスト”を受けたわけではないので、ヨーロッパ人が決してHIVに感染しないということは意味しません)ことも同時に見逃してはならないと思われます。

パンデミックな感染症も、インフレ/デフレも、いずれも人類(の豊かさ)をゼロまたは無限大にまで収縮/発散するようなパニックにはならないという腹を括ることも、一面の真理。敢えて衒学的な言い方をすれば、ウィルスの拡散は、インフレ(デフレ)期待と同様、局所的にはしばしば不安定だが、広域的には安定する微分方程式だということです。

昔から、周りの誰かが風邪をひいていたら必ずうつされるという感染症に弱い筆者にとっては、パンデミックはそうでなくても腹を括らざるを得ない問題。優秀な中高生諸君には、構造不況の金融界など目指さず、絶対に喰い扶持が無くならないウィルス研究の分野を目指して勉強してもらいたいものです(笑)。
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2009年4月28日火曜日

世襲議員を選ぶ側の責任

日曜日朝のフジテレビ「新・報道2001」は最近議論が喧しい世襲議員(立候補制約)問題について、現職国会議員等が賛成反対に分かれて喧々諤々。でも、番組としては「世襲議員は日本の政治が良くならない原因」という論調だったと拝察(快哉!)。

世襲議員問題は、 “為替力”で資産を守れや、月刊FX攻略等の雑誌記事でも昨年来批判的に取り上げて参りました。今月21日を以って休刊となるマネージャパン“為替力”アップ道場でも、

「冷戦時代には、減反政策も反共目的にかなっていたし、中選挙区制度にも地域エゴイズムを支える余裕があった。冷戦終結後の政治改革と政界再編は、不幸にも、自民党と民主党それぞれのなかに、守旧派と構造改革派を包含する経緯を辿ってしまった。小選挙区制度地域エゴイズムさえ満足させていれば良い世襲議員を蔓延らせたことと相俟って、世界的にも稀な無政府状態を作り上げている。

と書かせていただいております・・・この他にも、マネージャパン“最終号”は渾身の記事が満載です。まだ間に合いますので今すぐ「書店へGo!」。

新・報道2001の論調の核心部分は、世襲議員は政治資金団体(だけでなく選挙地盤そのものも、なのだが・・・)の相続税が免除されているので、「優秀なのに世襲ではない議員(予備軍)」が競争上不利に立たされるというものでした。それはその通り。しかし、国政選挙の地方選挙区におけるこのような理不尽は、地方公共団体の首長選挙においては必ずしも成り立たない点に着目せねば。世襲議員が跋扈する日本独特の怪奇現象は、何故に田舎の有権者が世襲議員を推挙したがるのかという観点で分析する必要があるのです。

国政の政策論争の場でなければならない選挙が、他の地域に比べ自分たちが暮らす地域が良い思いを出来るようにするための人選になっている。弁舌爽やかな革新政党を封じ込めるためには一定の機能を果たした利益誘導メカニズム(中央と地方のパイプを保証すること)の制度疲労が遂に臨界点に達したということでしょう。

民主党岡田副代表が発表した世襲制限には快哉を叫びたいですが、本来は三位一体改革を貫徹させたのち、全国区比例代表制を中核に据えた選挙制度改革をすべき(脱線しますが、三位一体改革の言いだしっぺが世襲議員候補の親馬鹿になってしまったのは残念。。。)

世襲議員問題について巷間議論されている論点に戻ると、「世襲議員には御坊っちゃまが多くて叩き上げに比べて優秀ではない」という批判も絶対ではないでしょう。世襲議員批判の発端が、安倍⇒福田⇒麻生各総理だとしても、3人の政治家としての質は批判されるほど悪くないと私は思っています。このような個人レベルの知能や才覚の問題よりも、自民党全体として世襲議員が多すぎることにより、例えば「減反制度は限界に来ている。見直すべきだ」という正論が党内から出て来ても押しつぶされてしまうという組織疲労の問題のほうが深刻であるということです。世襲議員は頭が悪いかどうか?仕事をさぼっていないかどうか?等の次元の話に矮小化すべきではない、とフジテレビの同番組に出演されていた各々方に申し上げたい。
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2009年4月24日金曜日

ついに出た!FXレバレッジ規制

(現段階ではリークに過ぎないかも知れませんが・・・)「FX業者は絶滅するのか!?」シリーズ等でお伝えして参りました①全額信託保全の義務化、②自動ロスカットの義務化、よりも大きな衝撃と考えられるのがレバレッジ(預けた証拠金の何倍分の代金の外貨取引が出来るか・・・)規制です。

2005年~2008年にかけて、FXが驚異的なブームになった背景の一つに過度なレバレッジがあります。金融規制が緩いと言われるシンガポールですら、レバレッジは20倍までに規制されていたり、米国においては20倍以上のレバレッジを提供するFX業者は資本金2000万㌦以上でなければならない(FX以外の店頭デリバティブ-所謂CFDはご法度)という規制が存在します。

現在FX業界は、このような規制が準備されている現段階で既に大きな曲がり角にぶち当たっています。リーマン破綻後の信用収縮によるヘッジコストの上昇とお客様のリスクアペタイトの減少。とりわけ、スワップ(金利差)狙いの取引でレバレッジを掛けることは正真正銘『金の生る木』だと思い込ませていたタイプの業者は大手・中小問わず瀕死の状態のようです。

業者の数は3割程度にまで減るという当ブログの予想はいよいよ現実味を帯びて来ました。これはFX業界だけではないでしょう。証券会社も銀行もノンバンクも全てひっくるめて、日本の経済規模を所与とすれば肥大化し過ぎていたのです。虚業が整理・淘汰されることは決して悪いことではありません!

毎回このような話を書きますと、フェニックス証券が廃業をするつもりなのかと親しいお客さまから問い合わせを受けます。宣伝のためのブログではないので(!?)少々気が引けますが(笑)、2009年度のフェニックス証券の事業計画を申し上げます。

今年度、特に上期中に、フェニックス証券は、“2銭でGo!”現在の『Active Zero』を発展させる形でCFDに参入します。フェニックス証券は大証会員ですが、日経225先物・オプションはCFDで参入するのです。

加えて、最速7月、『大証FX』を開始したいと考えております(現在、申請中&システム会社選定中)。『大証FX』は、今朝のテーマ(レバレッジを30倍程度までに規制)に適っているため、今後我が国のFXのスタンダードになる可能性を秘めています。そして何と言っても分離課税というメリットがあります。

高レバを自慢してこなかった店頭FXもしっかり設備投資します。『Forex Line』は主要通貨1000通貨単位の小口取引が同一プラットフォームで可能となります。また、約定スピードが飛躍的に向上する予定です(現在、3段階予定している投資の1段階が完了しており、これでも随分処理能力が上がっています)。

つまり、、、

1000㌦から始めるお手軽FX!⇒フォレックス・ライン
CFDで225や原油などに挑戦!⇒アクティブ・ゼロ
分離課税が魅力、次のスタンダード!⇒大証FX


廃業と身売りが加速しているFX業界において、何故フェニックス証券は攻めの姿勢で居られるのか?それは、レバレッジ規制等が緩かった時代、金利差を狙うのが当たり前だった時代に、FX業者とアフィリエートが結託して安易に新規開拓するという風潮に乗っからなかった。それゆえ、ストイックな経営が保て、固定化された資産や費用が少なくて済んだからです。その証が、2009/3末のフェニックス証券の自己資本規制比率。871.68%という数値は業界内断トツの最高水準です。
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2009年4月22日水曜日

フレディマック現役CFOの自殺

複数の米紙の報道によれば、自殺であることは明らか(自殺偽装の他殺ではない)らしいですが、動機原因については究明途上とのこと。

CFOに就任したのは、(ファニーメイと並んで)事実上の不正融資や尋常ではない額の不良債権が発覚して連邦政府管理下に置かれた後の9月の話。ただし、外部から招聘されたCFOではなく、同公社の財務経理の生え抜きであった点は、自殺原因と大きく関わるのかも知れません。

理由が何であれ自殺は良くない、とは倫理上の正論。しかし、自殺する人に悪い人は居ない、悪い奴ほど良く眠るというのもまた真理であります。「七転び八起き」同様、アラフォーの早すぎる死に、足元の根拠なき円安株高では読み取れない米国金融の恥部を垣間見た気がします。
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