2015年6月29日月曜日

ギリシャ悲劇は最終幕なのか?異次元の静けさを装う国債市場と為替市場

ギリシャ国債の三大投資家(俗称トロイカ)とされる国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)、欧州連合(EU)が、仏の顔も三度までと言わんばかりに、明日6月末を以って債務不履行という憶測が広まっています。

EUが継続支援しないという報道が流れたのが、休場の週末であったこともあり、今朝の外国為替市場の再開では、1%を上回るギャップダウンが、EURJPYなどで見られました。下記チャートはEURJPYの週足です。過去の債務危機のときのように何周にもわたって大幅なユーロ下落があったのと比べると、先週から今週にかけてのユーロ相場の落ち着きは嵐の前の静けさのようでもあります(昨年11月から今年3月にかけての長期にわたるユーロ安は、テーパリング観測によるドル高が主たる要因です)。
EURJPY週足チャート アヴァMT4)
同様の現象がより顕著で不気味なのが、ギリシャ国債の利回りとクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の推移です。


ギリシャ国債 CDS 過去5年分


ギリシャ国債 利回り 過去5年分
信用市場の落ち着き(※)、為替市場の落ち着きが不気味なほどであるのに対して、ギリシャの銀行は取り付け騒ぎとなっており、きょうからギリシャの銀行は6日間休業。ATMに並んでもひとり1日あたり60ユーロしか現金を引き出すことが出来ないとなっています。いちぶ報道では、それ以前に、ATMにユーロ紙幣が詰め込まれていないとも言われています。

わたくしのブログでギリシャについて述べてきたことをアーカイヴズから引っ張りだしてきたいと思います。

MF Globalとギリシャは根っこが同じ!?



↖↖↖今回だけはこうはならないのだと思います。




(※)ブルームバーグ社が無料で提供してくれているウエブ上の情報では10年物のジェネリックの数値しかとれていませんでしたが、残余財産分配をより的確に反映する短期債の利回りは週明け顕著に上昇しています。ギリシャ国債2年物は前週末比で12ポイントも上昇して年利33%に(価格は下落)。ギリシャ危機で世界同時株安

2015年6月19日金曜日

インディアンを皆殺しにしたアンドリュー・ジャクソン米国第七代大統領

今週のFOMC(連邦公開市場委員会)は、イエレン議長が記者会見で「年内利上げは1回のみ。雇用情勢次第」と語り、現状の金融政策を維持する内容だったことで、サプライズなしとの評価になりました。

へそ曲がりのわたくしは、FRB(米国連邦準備理事会)がその翌日発表した、一見してどうでも良いニュースに注目しました。

現在、10米ドル(本稿執筆時点で約1230円相当)札の肖像が、アレクサンダー・ハミルトン氏になっているところ、2020年から、女性が加わることが内定したそうです(WSJ)。

Alexander Hamilton to Share Image on $10 Bill With a Woman

アレクサンダー・ハミルトンというひとは、FRBの創設者であり、米国の初代財務長官だそうで、米国の歴史上の重要な女性(未定)と、横並び(?)で写ることになりそうです。

「米ドル紙幣に女性の肖像を」というのは、あまりおおっぴらに反対する人は少なそうです。問題は、紙幣の種類を増やさずに、どの男性を追い出すか???だったろうと思われます。

それは、下馬評では、アレクサンダー・ハミルトン氏ではなく、20米ドル札に描かれているアンドリュー・ジャクソンだったと言われています。

不人気投票で一番の理由は、米国第7代大統領の彼が、中央銀行制度に否定的な人物だったからとされています。

へそ曲がりののわたくしは、ジャクソン大統領に俄然興味を抱いてしまいました。

ところが、この人物のことを、ネットで調べると、日本語ウィキペディア、英語ウィキペディア、ホワイトハウスどっとゴヴ、ヒストリーどっとコム、、、、、、で、なかみがいちじるしく違うのです。

海外由来の内容なのに、ウィキペディアの英語版よりも日本語版のほうが詳しく書かれている(普通は逆)ところがあります。

それは、アメリカ原住民(いわゆるインディアン)に対する軍人としての戦い、女性や幼子も含む非戦闘員皆殺しを徹底指示していたことです。

この点は、ホワイトハウスの資料にはいっさい書かれていません。

また、黒人奴隷をたくさん雇って経済的に成功していたことは、あちこちで書かれていますが、英語版ウイキペディアでは、当時の平均的な奴隷よりも広い場所に住ませ、武器やお金、自由を与えていたと好意的に書いています。

我が国が寄らば大樹と思っている(思わざるを得ない)米国が、現在の戦争にまつわる法律や通念からかけ離れた野蛮で血なまぐさい方法によって、国を形作っていたのが、ほんの200年ほど前に過ぎないことは熟慮に値します。

しかし、スペインによるラテンアメリカ支配と同じく、天然資源と労働力を貪るために、原住民を支配するというエレガントな統治をとらずに大量虐殺し、黒人奴隷に強制労働をさせるというハードランディグな路線をとった理由とは???大統領の発言にはその言い訳もはっきりと示されています。

南北戦争とほぼ重なる時代、日本は黒船来航によって、不平等条約を結ばされこそすれ、その時点では非戦闘員を巻き込んだ皆殺しにはならなかった。ジャクソン大統領がインディアン移住法を成立させたのは、わずか22年前のことです。これはちょっと日本語訳が穏便過ぎると思われ、英語では、Indian Removal Actとなっています。

このような国の形が整っていない時代だったとは言え、当時の中央銀行(第二合衆国銀行)の存続に徹底して異を唱えた為政者が居たことは、ハイパーインフレの末に先頃自国通貨を廃止し公式通貨を米ドルへと切り替えたジンバブエをはじめ、国内銀行への取り付けがはじまっているギリシャの問題や、我が国のアベ黒田ノミクス問題への考えるヒントを与えてくれます。

米国版の樋口一葉となるのは誰か?誰か注目しているのでしょうか??

2015年6月11日木曜日

予想外だった早朝の利下げ、ニュージーランドドルの急落《セミナーご案内》

けさ、ニュージーランドの中央銀行が、政策金利を3.5%から0.5ポイント利下げし、3.25%とすることを発表しました。

予想外の利下げだったので、あさいち、ニュージーランドドルは対円などで、激しく下落しました。

スイスフランショックのときと比べたら大したことはないのに、何を大袈裟なと思われるかも知れません。

しかし、日本時間よりも3時間速く日が昇るニュージーランドで、朝方に政策決定会合が行われ、利下げ発表は、日本時間の朝7時台。流動性の薄いなかでの予想外の発表となると、通貨の急落の過程で、途中に値段がつかないという現象につながります。

もっとも、記者会見に応じたニュージーランド準備銀行総裁の発言にあるとおり、ニュージーランドドル高は持続可能な状態ではなかったとはっきり明言されています。

長い目で見てみましょう。アヴァMT4で過去のレートが取得可能なところまでさかのぼってみると、対円で見たニュージーランドドルは、40円台(超 円高域)と90円台(超 円安域)を、信じられないほど規則的に、驚くほど悠長なサイクルで、上下動していることが読み取れます。

1995年からの20年間で、超 円高域に突入したのは、2000年と2008年です。

ちょうど20年前の1995年は、それでもいまに比べると、ニュージーランドドルが割安で、だいたい60円前後をうろちょろしていました。

ここで話題ががらっと変わります。1995年というのは、日本におけるワインブームの火付け役となった田崎真也さんが世界ソムリエコンクールで日本人初の優勝に輝いた年でもあります。

ワインと言えばフランスという限られた常識がまだまだ横行していたその時代、ニュージーランドワインは質が高くてしかも割安だ。いまふうに言えば、コストパフォーマンスが高い。と目を付けていた酒屋さんや勉強家のワインテイスターも居ました。

為替の決定理論を複雑にしている理由のひとつとして、国際貿易からのアプローチと、国際金融からのアプローチが組み合わさってしまうことがあります。この点、強引に言わせてもらえば、ニュージーランドと日本の関係は、国際貿易だけに絞って論ずることがどちらかというと許されるセグメントかと思うのです。

ぶっちゃけた言い方をすると、乳製品とラム肉とワインの国際価格から、ニュージーランドドルの適正水準を評価することができるというわけです。

そこで(!!!)空席がわずか2名となりましたが、6/24(水)ニュージーランドワインセミナー(主催:アヴァトレード・ジャパン、特別協賛:乃木坂ワイン倶楽部ヴィラージュ、ジェロボーム、ADVFN)を、乃木坂ワイン倶楽部ヴィラージュにて開催いたします。

乃木坂ワイン倶楽部というくらいですから、複数の国から輸入したワインを比較試飲していただくことができます。

農家と醸造家が情熱を注ぎ生活を賭けて作り上げたワインに舌鼓を打ちながら、それでも冷酷に、はたしてどのワインがコストパフォーマンスがいいだろうかと探り当てていただきたいです。

日本では根強い人気を誇るニュージーランド(ドル)、そしてこの七転び八起きブログでも、2008年以降、何度も裏切られながら(苦笑)、ニュージーランド愛を叫んできた、その集大成、というとまったく大袈裟ですね。二度目がないみたいになってしまいますから。

お申し込みは、
support@avatrade.co.jp
まで、「ニュージーランドワインセミナー申込み」と件名にお書き添えのうえ、お願いいたします。

これまでのセミナーの様子を以下はご紹介いたします。


2015年5月29日金曜日

日本銀行のブタ積み当座預金には意味があるのか?

ついに200兆円を超えた日銀当座預金、よって300兆円を超えたマネタリーベース。

異次元緩和の結果であるこの膨大なマネーは、何をもたらすのか?

我が国の政府支出(超)のなかで、東日本大震災以降は、復興のための公共事業は無視できない規模であり、建築資材や人件費は上昇しています。後者については飲食業の非正規雇用(労働市場の似たセグメント)の時給急上昇(求人難)へと如実に影響を与えています。
それでも、少子高齢化により、赤字国債発行による年金勘定への補填こそが、財政赤字の核心部分です。
年金保険料(ただし現役世代から。この問題は後述)のみから、年金(引退世代へ)が賄われるべきところ、不足米(たらずまい)を、財政で補う。小泉政権以降は、民間非金融部門預金と日銀券発行残高と補助貨幣流通の増分の、最大要因はこれです。
そしてこの、現預金増は、日銀が買いオペをやっていたかやっていなかったかに関わらず、結果は変わらないということです(日銀当座預金がブタ積み状態なので、市中銀行貸出による預金創造にとって、市中銀行の国債保有負担が律速因子にはなっていない=内生的貨幣供給が成り立っていた)。
しかし、買いオペが無意味だったにせよ、財政赤字によって、民間の現預金が増えたのだから、購買能力かつまたは購買意欲が高まり物価上昇を引き起こしても良いはずではないか???それこそがアベノミクス(安倍黒田のミクス)の狙いだったのではないのか??

現実はそれほどでもなく、家計も市中銀行預金をブタ積み(!?)する。それどころか、タンス預金もされている。リカード=バローの中立命題が、そこそこ効いてしまっていて、引退世代が現役世代に負担を残さないように、消費を控えているということではないでしょうか?
ところで、「貨幣(流動性)の供給」と「可処分所得(貯蓄)の提供」とはまったく意味が違います(が紛らわしいこともまた事実で、これがIS=LM分析がわかりづらい理由??)。
銀行が貸してくれた100万円の預金は内生的貨幣供給の結果ですが、可処分所得ではなく、いつかは返済しなければならないものです。同じ100万円でも、海外に出稼ぎに行った家族からの仕送りとか外国企業からの配当収入の100万円(まぎれもなく可処分所得としての現預金の増加)とは異なります。前者の債務者=預金者が個人事業主だとして、今月末この100万円で手形を割り引いてもらえないと事業を手仕舞わざるを得ないが、割り引いてもらえたら、今月の売り上げ105万円の入金予定日(来月末)まで事業が存続できる。。。100万円の貨幣供給の結果、真水(まみず)の可処分所得としての現預金の増加は、たったの5万円(マイナス手形割引料=金利)にとどまります(銀行に救ってもらったという話に聞こえますが、手形を仕入業者に裏書譲渡出来ていればそれでも事業は継続できたわけで、何も流動性の供給が銀行業によって独占されているわけではありません)。
これに対して、財政で補填されて受給した年金は、マクロ経済に興味のない全体観のない受給者ならば、あたかも自分が働いてきたご褒美で、満額真水の可処分所得のように浪費されてしまいそうです。しかし、実はそれは錯覚で(ケインジアンの言う貨幣錯覚とは意味が異なるので、「所得錯覚」とでも呼びましょうか。。。所得と流動性の履き違え)に過ぎず、浪費すべきものではない(が、将来世代のために蓄えておくには、現金のほうが良い(流動性の罠+税務対策)という選択がなされていると考えられます。

ついでに、現役世代はどうでしょうか?もしも少子化高齢化の対策で財政が介入せずに現在より更に大きな年金保険料の負担があったとしたらもっと消費は減退するでしょうか?中立命題では、そこも違いがないということになりますが、「保険料を払った分は年金として取り返せる」と信じている現役世代が大多数とは思えず、わたくしは中立命題が現役世代の消費貯蓄選択で成り立つかは疑問です。
貨幣錯覚が成り立たなければケインズ政策は無効であるように、「所得錯覚」が作用してしまうと中立命題が脅かされます。世代にまたがる負債を無視した浪費は、物価高と、将来に税金や社会保険料の徴収できなくなる(出口戦略が描けない)。雲行きが悪くなり、ある閾値を超えると、ハイパーインフレとソブリンリスクが加速するという意味で、財政赤字は発散的構造を持っている(ある閾値まではインフレ期待にとって無意味な政策。ある閾値からはインフレを発散させ取り返しがつかなくなる政策)という困った存在であるというのがわたくしの考えです。

✡✡✡✡✡✡
ここらで、いったん、まとめますと、
①年金支給額-年金保険料収入(=赤字国債)は、典型的なヘリコプターマネーだが、その赤字国債を購入した銀行から日本銀行がどれだけ買いオペするかは、ヘリコプターマネーの規模は変わらない。
②ヘリコプターマネーを拾い上げた年金生活者が、「流動性が増えただけで可処分所得が増えたわけではない」と冷静に考えている限り、消費や物価には影響を与えない。
③が、増え方がある限度を超えると「可処分所得が増えたのだと錯覚する(同世代の年金生活者が多数を占めるようになるのでは)」「となると、将来、年金保険料(または消費税率?)をあげても年金勘定の赤字を解消できなくなる(出口戦略の雲行きの悪さ)。」「ヘリコプターマネーのままで貯蓄するよりは、価値があるうちに消費したほうがまし。あるいは《もっと安定した価値貯蔵手段》に交換しておいたほうが懸命」と考えるひとが雪だるま式に増えてくる
《もっと安定した価値貯蔵手段》の候補としては、オフショアのドル(などの外貨)、金などの商品通貨、ETFやJ-REIT(のファンド・オブ・ファンズ)、一流大企業の社債などが考えられます。

✡✡✡✡✡✡

通貨とは何か?トートロジーですが、それは、コミュニティのなかで大半のひとがそれが通貨だと思って、支払ってくれる、受け取ってくれる、人気投票の結果としてのアセットクラスにほかなりません。日銀の調査統計局がマネーストックの定義として決めるものでも、主流派の偉い経済学者の先生が決めるものでもありません。
昨年来のキプロスのように、自国通貨(自国銀行の自国通貨建て預金)からビットコインなどの暗号通貨へと、決済手段の人気が瞬く間に移行することだってあるのです。